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西の人はあまりに日本的過ぎるのでしょう。まず本当の事をいわないですね。どこまで冗談でほんとかわからないです。さらに何でも金に換算されちゃうと嫌になっちゃいますね。
関西の人はここにもたくさんいるけど、みんな準日本的であわなくてこちらの文化と衝突ばっかりしているようです。
2007年05月24日 06時52分56秒
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タワーレコードのポイントが貯まってきて、期限も近づいてきたのでディスクと交換することにしました。連休に入ったのでまとめて聴くには良い機会です。
歯医者の帰りだったのであまり考えたくなく、現代音楽コーナーに絞り、どうせタダみたいなもんだからと普段は買わないものを物色しました。
目に付いたのが、"OHM+: The Early Music Gurus of Electronic Music - 1948-1980"。
グルなんて単語と電子音楽とのギャップが中々中世SF的です。時代がアナログなところも良い。作曲家名がパッケージからは全然分からず、ビルボードやローリング・ストーン誌の絶賛記事が載ってるとこも怪しくて素敵です。
ハズレかなぁ、でも1948年からだから、シュトックハウゼンやシェフェールとかは入ってるだろうし、60年代も期待できそうだなぁ...と迷いつつこれに決定。レジ傍の月刊プレイボーイ(J)「ジャズ最強読本」と共に手に入れました。
「ポイント2倍期間なんですけど..」と親切な女性のレジ係さん、ありがとね、でも使います。
CD3枚にDVD1枚と、お買い得感のあるパッケージです。中を開いて作曲家 or 作音響者リストを見ると、半分ぐらいしか知りませんね。まぁ、そんなもんか。半分は技術者か研究者なのでしょう。
日本人からは湯浅譲二ただ一人です。もっといるんだけどなぁ、と早速不満です。
ピエール・アンリとか、重要人物が何人か入ってないし。ミュージック・コンクレートは別扱いかなぁ? ケージやチュードアを入れるんならレジャリン・ヒラーも入れてほしかった気がするし、IRCAMの成果も入ってないようだし...ま、文句言い出すとキリがありません。
遊び半分に手に入れたとは言え、歴史的な電子音楽など久々です。どこか構えていたのでしょう。1曲目からいきなりへたりこみそうなポヨヨン系調性音楽が流れ、脱力感に満たされました。のっけからテルミンでロマン派かよう!(チャイコでした)と期待は一気にしぼみました。ま、ロハ(死語)なんだしいっか。
ちなみに何年か前、玩具のテルミンが出ているのを、マニアックな楽器店で見つけて衝動買いしました。やってみたけど全く音程が取れません。弦の無い3次元空間ハープを弾いてる感じです。傍でみてたらただのハ”カです。音程とれないと友達を失いかねません。実際、若い友人たちの前で嬉々として弾いたら完全に無視されました。発明者のテルミン氏の苦労たるや推して知るべしです。
気を取り直して、以下、貴重な音源について書いてみます。末尾に試聴できるページを載せたので、興味ある方は聴いてみて下さい。
<1枚目>
2曲目はメシアン御大による1937年のオンドマルトゥノ曲です。公平を期したのでしょうか? "1948-"とのアルバム・タイトルは嘘ですね。てっきりケルンの電子音楽スタジオから始まるものと思ってましたから。冒頭で先駆的な電子楽器を紹介しただけかもしれませんが、戦前篇としてまとめてほしかった。
3曲目のピエール・シェフェールからはやっと普通に聴けました。こっちがケルンより先でしたね。全然忘れてました。
ま、機械の時代の音源を想像しながら具体音を聴くのは、懐かしくも新鮮な体験です。作品はレトロな美学に彩られています。
4曲目。突然、ジョン・ケージです。52年と早すぎる登場ですね。偶然か出鱈目か、終了後のブラボーの大拍手と、続くブーイングは取って付けたような気がしたんですけど、まさかそこまでが曲ではないでしょうが。
5曲目からは、SF映画の効果音に数多使われたような、聴き慣れた音色のサンプルが続きます。後にアニメの鉄腕アトムで使われたピコピコ歩きの音の原型が、50年代初頭に作られていたとは驚きです。
8曲目。『禁断の惑星』のサントラだそうです。56年でこの音ですか。驚異的ですね。映画のスチルを今見るとチャチですけど、当時は胸が高鳴ったことでしょう。キューブリックまではまだ遠いのです。
9曲目のオスカー・セラはコミカルな洒落た音楽です。チト一服。
10曲目、エドガー・ヴァレーズです。どういう原理の音楽的構造体なのか分かりませんが、多様な音の面白さを逐次重ね合わせている音響体です。アイデアの断片を音として次々と繰り出していきますが、全体的に間の多さを感じます。垂直な積み重ねも少ない。
この時代、他の曲も音が離散的ですし、あまり相互に絡みません。同時発信による多重音が種々の制約から困難だったのかもしれません。
その点ケージは52年なのに埋め尽くしてますね。音数が少ないにせよ特異的です。
13曲目はいよいよ電子音楽の巨人、カールハインツ・シュトックハウゼンの登場です。名前まで2人分はありますね。曲は59年の『コンタクテ』。接触です。当時の耳からすれば、未知との遭遇だったかもしれません。
超有名曲を入れてきたのはプロデューサの気合いでしょうか。私は、チョコチョコッと入るピアノの方が、設計・管理された電子音より好きですが。この入れ方にシュトックハウゼンのセンスを感じます。管理された偶然なのかもしれないけれど。
15曲目、ミルトン・バビットの作品はまとまった普通の音楽として作られていて、現代音楽慣れしていれば聴きやすい曲です。でも64年にもなってこの程度では先がありません。
16曲目、MEV(Musica Elettronica Viva)は学生の頃 NHK-FM の『現代の音楽』で聞いたような気がします。当時の用語で言えば、ライブエレクトロニクスでしょうか。ケージの影響を受けてるようですが、良く知りません。この曲は67年だそうですが、60年代後半のムーヴメントに合致しているように聴こえます。しかし、さほど古びてはいません。
<2枚目>
2枚目は59-70年で、この3枚組CDの中核といえます。
4曲目に、湯浅譲二のプロジェクション・シリーズから、64年のエセンプラスティックが選ばれています。今聴いても古びていません。当然フィルタはかけてますが、ホワイトノイズだけでこの緊迫感。後の『イコン』に通ずる佳品です。
冒頭と末尾の鈴虫の鳴くような音色、間の取り方、自然に任せるかのような時間の伸縮法に日本的感性を感じますが、音楽としてはインターナショナルです。
6曲目、デイヴィッド・チュードアは演奏は聴けども作品を知らず、でした。彼ほどの演奏家が曲を作らないとは考えられませんが。
タイトルが "Rainforest" なんですが、そのイメージ通りの音響です。情景描写したのか、作った音がタイトルを連想させたのか分かりません。
12曲目。ヤニス・クセナキスは『ヒビキ・ハナ・マ』です。70年万博の鉄鋼館のための音楽。膨大なトラックとスピーカを処理してます。当時の技術では大変な力技だったでしょう。力技の好きな作曲家でもあります。
クセナキスは楽器を使った曲の方が良いと思いますが、彼の電子音楽にはあまり強度を感じないので、その分親しみやすさはあります。でもこれを均一大音量で聴かされた日にゃぁ...
『ミニマリスト』に分類される、スティーヴ・ライヒとテリー・ライリーとラモンテ・ヤングが入ってるのですが省略します。ここにあるのよりもっと良い曲がありますしね。ライリーのはポップな "A Rainbow in Curved Air" の背景音みたいな曲です。
<3枚目>
72-80年です。クラウス・シュルツが入り、ブライアン・イーノで〆られています。どうやら、90年代以降のポップスの流れをにらみ、そこから遡って編纂しているようです。
ベルナール・パルメジアーニは単調な連打で始まり、時々様々なノイズが割り込み、しだいに音響が多層化していく77年の曲です。
ロバート・アシュリーの78年の曲は、声を変調したのか作ったのか、背景の具体音と共に不思議な空間を作っています。ジャズのベースのようなノートがずっと鳴っています。タイトルが "Automatic Writing" なんですけど、男女の(変調したのか?)囁き声といい、映画/演劇的なパフォーマンスを想像します。
こうして3枚、42曲をほぼ時系列で通して聴くと、年々歳々、1音1音が練られ、コントロールが行き届き、『音楽らしく』なってきたことが分かります。もちろん、音響的な複雑さも進化していきます。
電子音が驚異の音空間を切り拓いていった、古き良き時代の終わりです。
<DVD>
オマケなんですけど、知らない名前が沢山あり、結構楽しめました。
ジョン・ケージの映像と音は、未だに緊張感があって良いですね。本人は映像的に変調されてても貫禄がにじみ出ています。
ナム・ジュン・パイクのビデオ作品に出てくるヒッピーおじさんみたいなケージも、肩の力が抜けてて実に良いんですけどね。作品よりも人間かもしれませんね。アメリカ人の誇りですよ、ケージは。アメリカ人にそう思ってもらいたいものです。
ジャン-クロード・リセの音は、科学教育映像に付けた効果音のようで、時代を感じさせつつも、エスプリの効いたセンスが光ります。この音色と音使いは子供の頃から耳に馴染んでる気がします。
モートン・スボトニックは映像も音も60年代的な面白さがあるのですが、作品性の無さが無方針過ぎます。個人映画をある程度観てきた人間には、映像にセンスの無い愚作と映るでしょう。
クセナキスの『ボホール』は、本当に久し振りに聴きましたが、時代と隔絶した音響作品です。こうやって聴くと『響き・花・間』と構造はともかく響きが似ています。
どこまでが具体音か分かりません。エコーのかかった多数のガラスや金属の散乱する音響の背後に、金管のようなバス音が鳴り響きます。古代の音楽を未来に多層的に発展させた音響のようにも聴こえます。iTunes のビジュアライザに使えそうな映像は、音響と完全同期はしていないものの、なにかの規則に従って連動しています。
このDVDには、何人かへのインタビュー、モノローグ、解説付きの実演、MTVの走りのような映像と音楽などがぎっしりと詰まっています。
多数のスライダー付キーボードを神経質そうに演奏するローリー・シュピーゲル女史。ディレイなどに因る同音反復を重ねた音楽です。
ジョン・チョーニング(?)による、黄金分割とフィボナッチ数列を使った曲の詳細解説は70年代でしょうか? 3次元動的グラフでのプレゼンまでしています。
ポール・ランスキーのアニメ(ゴミとホコリの化身のような主人公は実写なのでしょうか?)、ロバート・アシュリーのジョージ・ワシントンのパロディ、マックス・マチュースの人体パフォーマンス、マザー・マラードのテリー・ライリー風ポップス等々がごちゃ混ぜになっています。
〆はわざとらしくもロバート・モーグでした。比較的新しいモーグ・シンセサイザのようで、音色が多様で音もきれいな感じがしましたが。
それにしても、時代が新しくなるにつれ、繰り返しの催眠効果を狙った音楽が多いことに驚かされます。電子音が使いやすいのでしょうか? もしかするとアメリカ人の曲に多いのか? 楽音、音色、響きの拡張と引き換えに単調さを選んだのでしょうか?
戦後のトータルセリエリズムに代表される繰り返しの無い緊迫感と、反復・繰り返しだらけの瞑想的な音楽との距離には、伝統楽器の奏でる音色と、無機的で時にユーモラスな電子音との差異以上に、大きな溝を感じます。
それにしてもこのDVD、2時間半もあります。お徳用とは言え、当分観ることはないでしょう。
こうして古き良き時代の電子音楽、電子音響、ライブエレクトロニクスなどを聴いていると、70年代までの当時夢見ていた未来の音響、未来の音楽は別の世界に行ってしまったのだろうかと訝しみます。
音色だけではなく、一音一音のコントロールが困難だった時代、電子音楽スタジオがとてつもなく高価で巨大だった時代によくこれだけの音を、そしてここには入ってない数多の音響世界を創り出してくれたものです。モーグの時代になってもまだ高価でしたからね。
コンピュータも黎明期でした。2万本の真空管からできているENIACから始まり、巨大なメインフレームの全盛時代、DECのミニコンの台頭、そして最初のパーソナルコンピュータ AppleII が生まれた時代までと、電子音楽の進化とは並行しています。
80年代以降の大衆化に向うコンピュータと電子音楽の命運とは、正確にオーヴァーラップします。当時まで、交錯するポイントは多くはなかったにも関わらず。
それにしても、懐かしくも歴史の彼方に去った変革の時代のなんと短かったことでしょうか。
しかし、1980年代に既に電子音は、さほど大衆の意識の端に上ることなく拡散し、世界に偏在していきました。ICタグより先にユビキタスを達成したのです。
電子音が空気のように当たり前になった時、あの、未来を切り開くと思われた先鋭な音世界は過去のものになったのでしょうか。手元にあるCDとDVDとにパックされているように。眼が消滅した後に残された眼差しのように。それならば、寺山修司が言ったように、未来は過去と同義語です。
事実は多分そうではないのです。音色世界、音響世界を極限まで拡張した電子音とその音楽は、19世紀的な楽音や音楽と同じように、音楽史の中に安定した地位を占めたに過ぎません。それは音風景の中に溶け込み、他と区分されません。
先鋭な精神はいつの時代にもありましたし、これからも生まれ続けるでしょう。それがサクリファイスであるにしても。
その極端で典型的な例をコンパクトに示してくれた点で、このCD+DVDは価値のあるものでした。
そのような意味で、人類を信頼できるというのは幸せなことです。おそらくその時、未来は過去形の追憶ではなく、未来形の希望になるのだと思います。
付記:
それはともかく、このパッケージはアメリカ人とアメリカ的な音楽に偏り過ぎですね。亡命した人物もいるけれど。アメリカのレコード会社の企画であるにしても、"The Early Music Gurus"と名付けるなら、もう少し何とかならなかったのかと思いました。
【メモ】
『未来への追憶』はオスカー・ドミンゲス(Oscar Dominguez)の絵の邦題から取りました。ローティーンの頃見た現代美術の本に載っていたのですが、借り物だったので原題を確認できませんでした。サイトを探したけど見つからず。
OHM+: The Early Music Gurus of Electronic Music - 1948-1980
アマゾンで試聴できます。ぜひ聞いてみて下さい。
http://www.amazon.co.jp/OHM+-Early-Electronic-1948...
OHM- The Early Gurus of Electronic Music:チラッと読んだ限りでは面白そうな解説が載ってます。
http://www.furious.com/PERFECT/ohm/
ENIACが最初のコンピュータかどうかには異説があることをご存知の方も多いでしょう。↓ここのカスタマーレビューの議論が面白く読めます。
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