とっち〜(Totti+81)さんのブログ(日記)〜クラシック音楽の総合コミュニティサイト Muse〜

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素人が武満徹作曲賞本選作品を審査する。(=^ェ^=)v

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というわけでオペラシティに行ってきました。先日の日曜のことです。僕は音楽関係者に知り合いなどおらず、部外者もいいとこなので、一人お気楽・無責任に聴けました。
=^◇^= kerakera
ただ聴くだけでは面白くないので、採点して順位をつけることにしました。審査員ごっこですね。かなり楽しめました。芸術に点数をつけられるのか、などと固いことは言わないで下さい。お遊びなので。
新幹線の中でとりあえず採点項目を列挙していきました。僕はドのつく素人なので、技術評価などは無謀です。独創性や斬新さの判断も、20年もブランクがあっては知識ベースがなさ過ぎて無理です。
そうした項目は片っ端から削りました。結局、素人の感覚判定になってしまうのがちょっと悲しいけど。しかも、整理する時間が無くて項目数がやたらと多い上、実際に聴きながら増えていったのです。やる前から自滅しそうな予感。(爆)●〜*

ともあれ、僕のつけた順位を記します。なるべく予断を排すため、聴く前はタイトルさえ見ませんでした。
1位:アンドレア・ポルテラ(イタリア):キューブ
2位:ヨーナス・ヴァールフリードソン(スウェーデン):戦場に美しき蝶が舞いのぼる
3位:植田彰(日本):ネバー・スタンド・ビハインド・ミー
4位:ウー・イーミン(中国):夢の回想
5位:ファン・マン(中国):アクア 〜武満徹の追憶に

ポルテラ氏のは出来すぎてて、それ以上に曲に力がありすぎるんです。つまり若さに欠けるように思えたので、武満賞の主旨にそぐわないかもと一応思いました。でも、強く心を動かされたのでこのままにします。

以下、演奏順にメモします。
中国の二人は普通でした。ファン女史は、タケミツトーンに不協和が混じったような響きとペンタトニックが特徴的。後半になるにつれ、破綻したような音響が時々発生します。構成の問題かもしれません。が、細かく作り込んでる印象はありました。外交辞令なのか、武満を意識しすぎる発言が多かったのですが、もし本音なら、武満から逃れようとする努力が音楽的な破綻を生んだのかもしれません。壁を突破したら良くなるでしょう。その期待は持てると思います。
ウー氏はオーケストラの鳴らし方が上手いんでしょうね。時に、後期ロマン派ってこんなんじゃなかったかな、と嘘っぱちな感想を持ったぐらいです(僕は聴かないので判断できません(^^;))。破綻なく綺麗に作ってあるけど、全然印象に残りませんでした。僕とは美意識が違うのでしょう。

ここで休憩。始まる前は、全くわけの分からない曲ばかりじゃないかと心配だったんですが、2曲聞いた後では、耳には一応入ってくるけど、僕の感覚が錆び付いて全くダメになってるんじゃないかと心配の方向が変わりました。

気を取り直して第2部です。まず、ヴァールフリードソン氏。
冒頭から音楽の質が明らかに違います。奇妙な構成と静謐な美しさを持った曲です。限られた範囲での多様性もあります。その意味で色彩を感じ取れる曲です。
2nd パート冒頭のバイオリンソロが第2奏者に受け渡される部分や、トゥッティの単純さ、静かに立ち上るようなくっきりとした響きなど、感心した部分も多々ありました。予期しない音が時々出現するのですが、違和感はありません。
そしてこの曲で初めて、表現に必然性を感じたのです。
内輪なのか、一人がブラボーを連発してました(何回も叫ばなくても分かるよ。僕だって手が痛くなるほど拍手したんだから・・・)。
僕は1位が出たなと思いました。それぐらいこの曲は魅力的でした。弱さというか繊細さの中に強さが潜んでいる。そういった印象です。静かな部分が静かに聴こえるのは当たり前ではありません。それは強靭な精神の一つの現れです。

次はボルテラ氏。さっきの曲の印象が強くて、出だしからしばらくの間は何とも思いませんでした。第何パートだったか、バイオリン群が一斉に楽器を水平に持ってf字ホールを口で吹き始めた時も、あんまし効果はないんじゃないかと思ったぐらいです。
しかし途中から印象が地滑り的に変わりました。さしたる変化のない音の重なりの、持続力がすごいんです。これまでの3人はオーケストラの持つダイナミックレンジの広さを、それぞれの方法で強調していました。強弱の波や落差が大きかったわけです。
ボルテラ氏はそのような使い方をしていません。淡々とした強度で、単純な音形や同音反復を重ねています(ミニマルではありません)。それらがボディブローのように、聴き手の精神を重く打つのです。しだいに身体まで共振していくように思われました。気づいた時には音楽に同化していたのです。
終曲は弦の持続音とグリッサンドが次第に大きくなり、フォルティッシモで終わりました。何と古めかしい手法か。しかし、それが実に必然的なのです。これほどの説得力にはめったにお目にかかれません。
「詩人の重要な仕事の一つは、手垢にまみれた言葉に、新鮮な輝きを取り戻してやることだ」と誰かが書いていたのを思い出しました。ボルテラ氏は音楽でそれをやってのけたのです。
後で楽譜を見て、シンプルで美しいデザインに打たれました。合理的で無駄が無い。演奏しやすいと思います。特殊奏法の説明が最初の数ページにあって、こんなに使ってたのかと驚きもしました。
この曲にあってはすべてが必然なのでしょう。何をやっても浮きません。実に堅固な音楽です。高い水準の音と精神の強度。そしてその持続力。コントロールが行き渡っており、上手さと底力とを感じました。面白さに欠けるかもしれないけど、表現としては第一級のものでした。

最後は植田氏です。一口に言って、オーケストラによる祭です。お祭り騒ぎと言った方が適切かもしれません。
冒頭から大音響の一撃。後はオーケストラをノイズメーカーのように使うばかりか、様々な音響ガジェットのオンパレードです。
蛇腹のホースを振り回したり(奏者は実に上手くコントロールしてました)、オモチャも色々使っていました。手を叩いたり、足を一斉に踏み鳴らしたりもします。バイオリンもノイジーな使い方が目立ちました。
動と静、音の大小が極端でもありましたが、しだいに激しさが勝っていきます。面白いけど、くどく感じました。リズムの強調が上滑りになってくるし、前半にはあった「間」が後半にはなくなります。ただ、遊びの要素が多いわりに、深刻な音もしばしば出てきたことは、強調しておいても良いでしょう。
バランスが悪いことと、音色のガジェットの大量使用に必然性が感じられなかったので、得点は下がりました。
ただし、始めに作曲者による解説を読んでたら、もっと点数が上がったかもしれません。思わず吹き出しましたから。植田氏は冗談の分かる人のようです。

さて、実際の結果はどうだったか。今年の審査員、西村朗氏のつけた順位は、1位:植田彰氏、2位:ポルテラ氏、3位が残りの3人でした。
正直、ヴァールフリードソン氏の曲は中国の2人より、個性だけをとっても明らかに優れています。でも、武満賞はただ一人の審査員が決めるのですから、審査員が個性を出すのは義務のようなものです。評価軸が違うのも当たり前。
でも植田氏の曲をアヴァンギャルドと呼んだのには違和感を覚えました。「アヴァンギャルド」は20世紀前半(せいぜい70年代前半まで)のイメージなのと、現代の文脈の中では、破壊力としてはそこまで大きいと思わなかったからです。

最後に、植田氏の奔放な曲を聴いて一層強く思ったのですが、指揮の岩村力氏と東京フィルハーモニーの持つ高い実力と、真摯な努力に敬意を表したいと思います。
新作5曲を一晩で演奏するだけでも大変なことでしょう。それを、特に無理を感じさせる事無く、質的に平等にかつ曲の個性を引き出して演奏していました。特殊奏法や無理難題みたいな指定も多かったにもかかわらずです。
全体の響きだけでなく、独立して生成する音たちもクリアに聴こえました(会場が良かったのかも?)。実に丁寧で誠実な仕事振りだと感じ入ったしだいです。オケなど若い頃からあまり聴かなかった素人ながら感心しました。
この日の主役は岩村氏と東フィルだったのかもしれません。実際、僕は彼らの支持者になってしまいましたから。

【メモ1】
コンポージアム2007
http://www.operacity.jp/concert/2007/070527.php

2007年度 武満徹作曲賞 受賞者決定!
http://www.operacity.jp/concert/topics/070527.php

審査員:西村朗氏の総評、受賞者の言葉
http://www.operacity.jp/concert/topics/070527.php

本選演奏会の放送予定:現代の音楽(NHK-FM)
6月 3日[日]18:00〜18:50
6月10日[日]18:00〜18:50 *2週に分けて放送

【メモ2】私の採点表
・A〜Eは演奏順の曲の並びです。本文をご参照あれ。
・等幅フォントでないとズレます。
・聴きながら項目を付け加えていったので、似たようなのや変なのが増えました。悪しからず。。=^◇^=;

===========================
 A  B  C  D  E
===========================
 3  3+ 4  5  3  感動度、感心度
 4  4+ 4  5  4  美しさ
 3  3  4  3+ 5  若さ
 3  3+ 5  5  5  エネルギー
 3+ 4  4+ 5  4  洗練
 3  3+ 4  5  3+ 厚み
 3  3  5  5  4  必然性
 3  3+ 4  5  3+ 深さ
 2  2+ 4  5  4  存在意義
 4  4  4+ 4  4  理解容易性
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 3  3  4  4  4  新しさ
 4  4+ 6  5  4  拍手
 3+ 4  4  5  3+ 上手さ
 2  2  4  3  4  危うさ
 3  3  4  5  3+ 表現の根拠・根源
 2  2+ 5  5+ 3  もう一度聴きたいか
 3  3  4  4+ 3  心地良さ
 3  3  4  5  3  持続力
 2  2  4  4  5  斬新さ
 3  2  4  5  5  インパクト
===========================
57 62 82 88+ 73 合計:元
60 64 86 93+ 78 合計:項目増後
===========================

こうしてみると、同じ基準で採点してない項目が目に付きますね。「美しさ」なんて明らかに基準が変化してます。
ま、それでいいのです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<改訂> 070603
・表の項目と得点表示を左右入れ替えた(Win の標準設定では見にくいため)
・1項目復活させた(満点100となった)
・表現の修正、誤字脱字誤植の修正、誤りの訂正を行った。

 現代音楽 古楽 作曲家 ヴァイオリン(バイオリン) ピアノ


日付:2007年05月30日

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このブログ(日記)へのコメント

とっち〜(Totti+81)

【メモ3】追加します
岩村 力 Chikara Iwamura
http://www.aspen.jp/artist/jp/chikara_iwamura.html
東京フィルハーモニー交響楽団
http://www.tpo.or.jp/japanese/index.html

2007年06月03日 18時35分53秒

とっち〜(Totti+81)

ブログから評を引っ張ってきました。素人仲間らしき人もいます。
概ね、ポルテラ氏とヴァールフリードソン氏とを高く評価しているようです。

コンポージアム2007 武満徹作曲賞本選演奏会:最後から二番目の思想
http://pensees.blog32.fc2.com/blog-entry-207.html

2007年度武満徹作曲賞本選演奏会 @東京オペラシティ コンサートホール:Bweebida Bobbida
http://blog.goo.ne.jp/bobbida/e/15dae4c7186ecdb449...

武満徹作曲賞:geology of the listening room
http://naokd.seesaa.net/article/43274529.html

BBSですけど "Message Board for Classical Music" から辻本氏の投稿。コンポージアム4(5/27) をご覧下さい。
http://6518.teacup.com/classical_diary/bbs

少し情報価値が高まったかな...(^^;

2007年06月03日 18時41分43秒

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