奇曲鑑賞記　＜名指揮者作曲列伝＞：九尾さんのブログ：Muse クラシック音楽のコミュニティ

九尾さん

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奇曲鑑賞記　＜名指揮者作曲列伝＞

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ワインガルトナー、フルトヴェングラー、クレンペラー、ワルター、マタチッチ、スヴェトラーノフ、マルティノン。いずれも歴史に名を残す大指揮者だが、彼らの作曲家としての面は、あまり知られていないのではないだろうか？　実は私もごく僅かしか聴いていない。
　　
まずフルトヴェングラーだが、一時間越えの巨大交響曲を３曲も書いている。
動画で聴いた限りでは、いかにも後期ロマン派ドイツ音楽だったが、いかんせん長過ぎる。ＣＤが何種類か出ているようなので、割と知られているのかもしれないが。
　
マタチッチについては、クラシックに興味を持ち始めた子供の頃に、ラジオでＮ響による「対決の交響曲」というのを聴いた記憶がある。現代っぽい響きの曲だったな～、程度の遠き日の思い出。
マタチッチ最後の来日での自作自演で、細かい部分が指揮出来なくて、オケの人に「私達でやりますから先生は泳ぐ真似でもしていて下さい」と言われ、本番ではホントにクロールしていた（おい）、という伝説の演奏会だったと知ったのは、ずっと後の話。
　
クレンペラーの交響曲については、かなり変な曲だという噂を耳にし、交響曲マニアとしては是非聴いておかねば！（←どんな使命感じゃ）と期待に胸を膨らませてＣＤを買った。
うむ、確かにロマン派と現代音楽と俗っぽさがごちゃ混ぜになった変な交響曲である。そして是非問いたいのだが、何の脈絡もなく登場するフランス国歌（ラ・マルセイエーズ）には何か意味でもあるのか？　ワケわからんぞ。
　
そしてロシアの巨匠スヴェトラーノフ。
豪快な演奏で知られた上、カリンニコフやミャスコフスキーやフレンニコフやアレンスキーといった、日の当たらないロシアの作曲家の作品を紹介してくれた、ロシア音楽愛好家やマイナー曲マニアにとっては大恩人でもある御方。
そんなスヴェトラーノフ様が作曲家としても活動し、自作自演盤を出しているとなれば、聴いてみたくなるのが人情というもの。
　
一応現代の作曲家なのだから前衛的かもしれないぞ、と期待と不安入り混じりつつＣＤを購入したのだが、聴いてビックリ、まるでラフマニノフにさらにロシアっぽさを加えたような、砂糖菓子のハチミツ漬けみたいに甘い、嬉し恥ずかし濃厚ロマン主義音楽。　
ソヴィエト体制下だったからか？…と政治的な理由も浮かんだが、多分違うな、これは。スヴェトラさん、好きでこういう曲書いてるね、きっとノリノリで。
　
特に面白いのが、交響詩「赤いカリーナ（ゲルダーローズ）」。
もう冒頭からロシア臭ムンムン！　民謡風メロディがオケによって堂々と歌われ突き進む。と、突然グレゴリオ聖歌＜怒りの日＞の有名な旋律が大袈裟に炸裂！　何事かと思っていると再びロシア情緒満開音楽になり、キラキラとした煌めきを放つ。ここ良いな～と聴いていたら、いきなり飛び出す前衛音響！　恐らくトーン・クラスターだと思うが、それまでロマン派色全開だったのにここに来て何が起こったのかと面喰らっていると、やがてオケが鳴り止み、最後はなぜか女声ヴォーカルが民謡風メロディを朗々と歌って終了。振り回されっぱなしの２０分間。　…でもこういうの、嫌いじゃないわ。
　
「赤いカリーナ」という小説の作者を追悼して書かれたらしいし、交響詩なので何らかの物語があるのだろうが、知らなくても充分楽しめた。いろんな意味で。
　
もしかして大指揮者が作曲した知られざる作品は、ケッサク奇曲の宝庫なのかもしれぬ。
　
　
※「赤いカリーナ」は見付からなかったので、代わりにピアノ協奏曲を。ラフマニノフ好き必聴！　　

①http://www.youtube.com/watch?v=ymu_V1LHRTQ
②http://www.youtube.com/watch?v=SAPzuh4AH3s&feature...
③http://www.youtube.com/watch?v=OMBUBoKNhoQ&feature...
　

　交響曲　作曲家　器楽曲　吹奏楽∩管弦楽器　協奏曲

日付：2012年10月20日

13件のコメント

このブログ（日記）へのコメント

Shigeru Kan-no

面白いのは最近チェリビダッケの管弦楽曲のスコアがショットからどんどん出てきたようです。実際ルーマニアのオケあたり最近初演していますね。交響曲なんか3曲ともナクソスあたりから出るんじゃないかな？

ただここでは「カペルマイスター音楽」として、普通のプロの作曲からは一段格下げにされます。フルトヴェングラーが自分でバルトークとかシェーンベルクとか初演して自分はやはり保守的だと気づいたのが始まりでしょう。

やはり専門の指揮者は余暇で作曲するとどうしても作品が保守的になり古い感じは隠せませんね。例外はブルーノ・マデルナ、ブーレーズ、ペーター・エトヴェシュや昨日ドナウエッシンゲンで代役で振ってすぐ好きなネパールに飛んだルペルト・フーバーあたりか？やっぱり作曲畑から出てこないと思想的・後術的にどんどん遅れるようです。

2012年10月20日 17時35分10秒

九尾

へ～、チェリビダッケも交響曲書いているんだ。それは初耳。聴いてみたい。

クレンペラーなど、保守的にも前衛的にもなりきれない、中途半端感が面白いｗ

2012年10月20日 20時11分50秒

Shigeru Kan-no

彼が始めて来日したときのインタビューにあります。3曲密かに書いていました。

最近はワインガルトナーの交響曲とかやってますね。オペラなんかワーグナーよりも長大とか言われているんだけど上演の事実がいまだに無し。

マゼールの協奏曲は素人の局地だったね。よくもまあー、これだけストラヴィンスキーとホルストとプロコ知ってますねという感じの曲。マタチッチぐらいのレベルかな？やっぱりこういうのはプロの作曲家のようにしょっちゅう書いてないと駄目だね。名指揮者だからちやほやされるけど、プロから見るとすぐ化けの皮がはがされる。バーンスタインの管弦楽曲とかそうだね。でも譜面見るとシノポリの方が書ける、と現代音楽の評論家の大倉君にパリの楽譜屋で言ったのだが、何で見ただけでそんなことわかるのと質問されてしまった。芸大の学理の大学院出てもわからないものなのかな？それで批評されたらこちらはたまったもんじゃない。

サロネンもレベル低いね。指揮のやりすぎ。ここに住んでいるワンゲンハイムも作曲するね。元ボン・オペラの音楽監督兼ケルン音大の指揮下の教授。スコア見るとやっぱり素人だ！シュトックハウゼンとは比べ物にならない。5線に普通に音埋めたらそれでもう遅いのよ。

2012年10月21日 05時07分31秒

ｕ－

その指揮者たちが作曲もしていたのは知らなかったです。
持ってるフルトヴェングラーのBoxには彼の曲は入ってないです。

動画の曲、確かにラフマニノフ臭さがあります。（￣ー+￣）
特に２楽章でそう思いました。

2012年10月21日 09時41分51秒

九尾

ｕ－さん

意外と作曲もしている指揮者って多いんですよ。
そもそも昔は作曲も指揮も兼業で、分業されるようになったのって比較的最近ではないかな？　

2012年10月21日 11時59分50秒

九尾

菅野さん

マゼールとサロネンの曲、以前エアチェックして聴いたことあるけど、サッパリ面白くなかったです。
クレンペラーくらい変なら、別の意味で面白いのに…。
　

2012年10月21日 12時01分28秒

ボンタン

フルトヴェングラーやカザルスは「演奏しているときよりも、作曲しているときの方が充実感を感じる。」と述べていますが、いずれも演奏家の域を超えることは出来ませんでしたね。ピアニストのシュナーベル、ホロヴィッツ、ナットも同様です。一方で、バーンスタインやシュナーベル等のように「作曲は全演奏家の義務だ」と主張する人もいます。１９世紀以前はまさに演奏家＝作曲家は当たり前の時代で、だからこそラフマニノフやマーラーのような名演奏の出来る作曲家が出たんでしょうね。

2012年10月21日 19時22分29秒

九尾

フルトヴェングラーとスヴェトラーノフは、御本人は指揮より作曲が本業のつもりでいたらしいですね。
世間の評価は違いますけど。

2012年10月21日 20時51分53秒

Shigeru Kan-no

というかこちらの教育ではそもそも作曲と指揮科の教育はほとんど同じものです。どんな指揮者でも作曲ができるように卒業させられるのですね。したがって和声や対位法が完全にできないと落第や退学させられます。

作曲家のつもりでも指揮の教育は副科以上で義務で付いてきます。違いはそれを実際に手を動かして棒を振るか否かですね。ピアノ演奏技法やスコアリーデイング、通奏低音・理論は全く同じです。だから自分が作って他人が何がなんだかわからない作品でと自分でやれと良く言われますから準備が必要です。ピアノと同様ですね。作曲では食えないので結局指揮の教育は厳しくなります、その祭問い条件としてピアノが抜群に上手いことですね。日本みたいにただ譜面さえ書ければ良いと間違った手抜き教育すると絶対に食ってはいけません。

したがって欧米の指揮者はほとんど作曲の教育は受けているのです。

2012年10月22日 17時20分15秒

サウル

指揮者、、、昔はワルターしか知らなかった。。。。クラシックと言えば、ワルターのレコードが２曲、３枚あったダケだった。

あとは、歌謡曲のレコードしかなかった。
　
　

2012年10月24日 21時07分19秒

Shigeru Kan-no

クレンペラーあたりまで作ってますね。ベームあたりになってやっと作らなくなる。

2012年10月25日 19時36分48秒

九尾

サウルさん

私は、クラシック初心者の頃、オーマンディさんのＣＤにお世話になりました。

2012年10月25日 20時10分36秒

Shigeru Kan-no

オーマンディは実は当時の現代音楽の積極的な初演者で非常に有名です。実はCDで出ていないレパートリーにはフィラデルフィアとの膨大な近代・現代音楽の録音が残されています。