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通奏低音

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 通奏低音(basso continuo)というのはパート名だ。一人ではない。低音の旋律楽器と鍵盤楽器の少なくとも二人いる。我々のカンタータだと、チェロ2,3人、コントラバス一人、ファゴット一人、オルガン一人(曲によってはチェンバロ)。曲によっていろいろで、全員が弾く曲もあるが、最低でもチェロ一人+オルガン一人だ。
 オルガンパートといっても楽譜には弾くべき音符が全部書かれていないことが多い。チェロの譜の音符のあちこちになにやら数字が書いてある(数字付き低音)。オルガン奏者はこれを見ただけで即興で(前もって練習しておいても良いわけだが)その数字の指示通りの和音の入った声部を考えて弾く。特別な訓練がいるらしい。
 カンタータだけでなく、器楽曲でも通奏低音と一緒というのがたくさんあって、鈴木の教則本に入っているヘンデルのニ長調のヴァイオリンソナタは本来、ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタだから、ソロ・ヴァイオリンとチェロ+チェンバロあたりで演奏するのが本来の姿。トリオソナタも3人ではなく、フルートヴァイオリン+通奏低音(チェロ+チェンバロ)だから4人必要だ。
 バッハが通奏低音を崩した、という印象があって、ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタもあるが、ヴァイオリンチェンバロのためのソナタもある。トリオソナタをヴィオラダガンバとチェンバロのためのソナタに編曲したりもした。つまり、チェンバロピアノになれば、古典派のヴァイオリンピアノのためのソナタになるわけで、通奏低音が解散させられ、鍵盤楽器だけになっている。

 通奏低音のチェロの弾き方はちょっと独特だ。上のプリマドンナたちのために舞台を作っている、という役どころで、決してプリマドンナの後にくっついてはいけない。こちらがタイミングを出す、という感覚だ。チェロを見ていると引き込まれて歌い出さずにはいられない、というように弾くように指導されている。上がこう歌いたいと思っている意志を先読みする。出だしから最後までほとんど休符がないことも多く、出の合図も担当することが多い。気持ちとしてはリーダー。

 プロの演奏会で、日頃通奏低音をやっていない、オーケストラのチェリストが、カンタータのアリアなんかの通奏低音パートを弾くと、ひどく落ち着かない印象を持ってしまう。
 逆にいつも通奏低音をやっていると他が弾けないか、というとそれはない。通奏低音の精神(低音がリードし、その上に音楽が構築される)というのは少なくともロマン派の途中までは生きていて、ブラームスの弦楽四重奏なんかでも、チェロが積極的に場を作って弾くとうまくいく。ベートーヴェンは結構、ヴィオラや第2ヴァイオリンに通奏低音をやらせたりするのが好きだ。ショパンのピアノ曲にも左手がかちっとした舞台を作り、その舞台を右手が踊り回る、という作りの曲が多いと思う。
 ピアノを聴いていて、左手が従属的だと聴いていて変だし、カルテットでも第一ヴァイオリンがリーダーで絶えず合図しまくって弾き、三人が後からついてきている演奏はおかしい。

 チェロ 室内楽


日付:2007年06月25日


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