はかせさんのブログ（日記）〜クラシック音楽の総合コミュニティサイト Muse〜

　音楽大学に通っている息子が、大学の担任の先生からヴィオラを借りた。たいそう気に入ったようで、今日からPMF（Pacific Music Festival Sapporo)で一ヶ月の札幌暮らしだが、その間もこの借り物を使うらしい。買うことになるかもしれない。もう、私の作った楽器に戻ることはないだろう。思えば短い本妻生活だった。
　楽器は複数持っていても、一台しか弾かなくなると思う。私もこれまで、何度か複数のチェロが家にあったことがあるが、いつも一台しか弾かなくなった。最初のうちは、曲やジャンルによって使い分ける、なんていうが、そうはならない。弓も同じだ。一番良いものばかり使うようになる。
　ストラディバリとガルネリの両方を持っていて、曲によって使い分けたヴァイオリニストがいた（ハイフェッツだったか）というが本当だろうか？

　楽器は一台ずつ、こういう風に扱わなければならない、というポイントが違う。良い楽器ほどそれが意固地だ。イッサーリスによると、彼が日本財団から借りているストラディヴァリ（かつてフォイアマンが愛用していた）は、時々「Don’t hit me! I am a Stradivarius!」と苦情を言うそうだ。
　それなりの時間弾いたチェロというと、今まで１０台くらいしか経験はないが、このポイントが全く同じ、というチェロに出会ったことがない。同時に複数のチェロを持っていてもそれぞれポイントが違うので、気に入った楽器の弾き方で弾いてしまう。それでもう一台を弾くと違和感があって弾かなくなる、ということもあるのかもしれない。結局複数持っていてもスペアくらいにしかならない。

　自動車は、オープン・二人乗りのスポーツカー（英国製）と、エンジン音がセクシーなセダン（イタリア）の２台を持っているが、この複数所有はうまくいっている。双方の車に対して寛容になる。スポーツカーに荷物が積めないと文句を言ったり、セダンにコーナーで傾きすぎると罵ったりしなくなる。一台しか持っていないと、その一台に、車に対するすべての要求をつきつけることになり、結局妥協だらけの中途半端な車しか選べなくなる。本当はもう一台、タウンカーがほしいのだが。

　チェロ