はかせさんのブログ（日記）〜クラシック音楽の総合コミュニティサイト Muse〜

　佐々木ヴァイオリンのHPはとても情報が正確で重宝している。ここに佐々木氏が注文で作る楽器の値段が明記してある。
http://www.sasakivn.com/werkstatt/vnfoto/meinevn.h...
ヴァイオリン95万円、ヴィオラ105万円、チェロ190万円。彼の製作した楽器を弾いたことはないので、これが高いのか安いのかはわからない。しかし、ここで確かなことは彼はチェロをヴァイオリンの倍の値段で売るといっていることだ。
　私の感覚だと、チェロはヴァイオリンの倍だと安すぎる。ヴァイオリンがチェロの半額だと高すぎる。佐々木氏によると、弦楽器の価格設定として、原材料費、作業時間、利益＋危険手当増加分、攻防維持費、税金、値引きが関係する。後の方はわからないので、原材料費と作業時間を比べる。
http://www.sasakivn.com/werkstatt/qa/holz_qualitat...
　先日紹介したカールヘフナーの価格表で、材料費を見てみよう。
http://www.minehara.com/showcase/maruichi/hofcat1....
だいたいの材料に松竹梅くらいのグレードがあるので、竹くらいで比較してみる。裏板（横板付き）はVn back with side, well flamed 12100円、Vc back with side, well flamed 114600円。表板はVn top, good quality 4700円、Vc top, good quality 39300円。ネック材はVn neck, well flamed 5700円、Vc neck, well flamed 17200円。他にも細々と必要だが、この３つの合計で比べるとVn 22500円、Vc 171100円。７倍以上だ。flamed とはカエデ材の横方向のシマシマ模様がついているという意味だろう。

　作業時間は計ったことがないので難しい。ヴァイオリンの表板の長さは標準で356mm、チェロは755mmなので、まあ、倍だ。実際には相似形でないのだが、相似ということにし、相似比は２倍ということにしてみる。相似比が２倍だと、面積比は４倍、体積比は８倍だ。
　表板の輪郭を切り出し、正確に整形する、という作業は長さに関わるから、作業時間は２倍かもしれない。でも厚さがちょっとだけ厚いのでもっとかかる。
　表板の横板との接着面を平らにする、という作業は面積に比例して作業時間がかかるから４倍だろう。
　表板の外側の隆起を削り出す作業は、この作業中に捨てられる木くずの量に比例して時間がかかるかもしれない。それは体積に比例するから、８倍かかる。
　こうして考えるとまあ、材料費の７倍強と同じくらいの作業時間がかかるかもしれない。実際にはプロの製作家の、荒削りの速度はすさまじく速いので、この比率にはならないだろう。そういうことをすべて考えたとしても、２倍はひどすぎる。

　だからといって、佐々木さんのヴァイオリンが95万円で売れるとしても、彼のチェロが７倍の665万円だとあまり売れそうはないし、彼のチェロが190万円だからといってヴァイオリンが７分の１の27万円だと、彼としては安すぎると思うだろう。
　結局、チェロは作っても儲からないけれど、興味がある、という製作家がチェロを作るのかもしれない。

　チェロ　ヴァイオリン（バイオリン）