はかせさんのブログ（日記）〜クラシック音楽の総合コミュニティサイト Muse〜

・弾きにくかったら申告しよう

　室内楽を練習していて、何を議論したらよいかわからない、というのはよくあるのだが、とりあえず、自分が弾きにくいところ、窮屈なところを、他のメンバーに救済して欲しい、と頼むのは良いアイデアである。なにか無理があるとしたら、それはたいがい、何か間違った考えにとらわれている。

　一昨日、クラリネット吹きがやってきて、ベートーヴェンのクラリネット三重奏曲変ロ長調op.11「町の歌」の練習をしたのだが、ピアニストが窮屈だと言ったのが、２楽章５１小節の三拍目だ。
この曲はゆったりとした美しい旋律をチェロが歌って始まる。変奏曲とは書いていないが、そういう感じで、形を変えてその旋律が繰り返される。

　５０小節から５２小節はピアノが旋律を担当しており、冒頭のチェロなら５小節から７小節に相当する。６小節のチェロにはないが、５１小節のピアノの３拍目にはトリルがあり、ピアニストはここをほとんどターン（g-f-e-f-g-as）で弾く。ここが窮屈だというのだ。
　ここをメトロノーム的に時間通りに弾くと、非常に忙しくなり、この曲の伸びやかな気分に合わない。少し、ゆっくりとターンを弾き、次の１拍目までに時間を使いたい、というのだ。もちろん、クラリネットも私もそれに異存はないのだが、言われるまで、そのことを意識していなかった。
　なぜならば、５０小節からはクラリネットとチェロはユニゾンで、我々はこのユニゾンを合わせることに気を取られていた。ついつい、このユニゾンの伴奏音型を合わせようと、主体的に弾いてしまっていた。実際には伴奏なのだから、ピアノの意志に従うべきなのに、５１小節３拍目を軽めにして５２小節の１拍目をはっきり弾くようにしていた。それでピアノのターンの動きを殺していたのだ。
　一度、ピアノだけ弾いてもらい、１６分音符で弾く左手の動きを聴き、この左手に合わせて弾くようにしたら、うまくいくようになった。

　今回は、ピアノの動きを我々が邪魔していたが、逆の間違いもよく起こる。そういう場合、互いにそのことを口に出して解決していくと、だんだん音楽らしくなってくる。また、口の利き方としても、他人を非難するのではなく、自分の窮状を訴えるのは、受け入れられやすい。

　チェロ　ピアノ　室内楽