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後期のカルテットが好きでなかった大学生の頃、ポリーニの弾いたベートーヴェンの後期のピアノソナタのLPにはまった。とりわけ、31番変イ長調op.110を繰り返して聴いた。
全楽章好きだったが、特に第1楽章の出だしの整った曲想、そこからこぼれるように始まる16分音符の雄大な動きがとてもヒロイックに感じた。また、2楽章のスケルツォも、ポリーニの強靱なタッチがピアノ全体を揺らしながら弾く様が見えるようだった。
そして、終楽章のフーガ、特にその途中でフーガが反行するところが、何度聞いてもぞくぞくした。
道を歩いていても、この曲が頭に鳴り続けるようになっていたころ、父がたまたまかけていた、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第15番イ長調op.132が、全く抵抗なく聴けるようになっていることに気付いた。
それで、父がいないとき、自分でこの曲のLPをかけて聴いてみたら、隅々まで好きになっていた。
この曲は、何かしながら聴くのには適していないように思った。レコードジャケットを読みながら聴いたりしてもだめで、一生懸命聴くのが良い。
チェロ ピアノ 室内楽