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大作曲家の頭の中に、どのように音楽が出現し、それが作品として形になるのかは想像さえ出来ない。モーツァルトは多くの場合、作品の最初から最後まで完成した形で頭の中に存在し、それをただ紙に書き取るだけだったと言われる。それだけに、書き始めてから完成までが異様に速かったらしい。有名なハイドンセット弦楽四重奏曲を除くと、ほとんど書き直した形跡がないらしい。ベートーヴェンは有名なスケッチ帖を愛用し、紙の上で徹底的に推敲したらしい。
モーリス・ラベルは、働き盛りの50歳代に、乗っていたタクシーの交通事故で頭を強打し、脳の大脳皮質の小さな領域に傷害を負った。その場所は「運動性言語中枢あるいは、ブローカの領域」と言われる場所だ。作曲家にとってもっとも残酷な場所が障害箇所として選ばれたと言えるかもしれない。
大脳皮質は、新聞を広げたほどの面積があり、目で見ても、顕微鏡で見ても、どの場所もよく似ているのだが、50くらいの領域に分けることができて、それぞれの領域はユニークな仕事をしている。ある場所の機能は、他の場所で補完することはできない。運動性言語中枢に傷害を負うと、頭の中で言葉が浮かぶのに、それを表出することができなくなる。
ラベルの場合、記憶障害、失語症が徐々に進行し、煙草の火のついた側を口に入れようとしたり、渡されたナイフの刃を握ろうとしたりした。そして、作曲が出来なくなった。彼が言うのには、頭の中にたくさんの作品が完成した形で整理されているのに、それを五線紙に書くことが出来ない、というのだ。それでも、自身の曲の練習に立ち会った際には演奏者のミスを明確に指摘できた。
音楽を聴き、理解する神経回路に障害はないが、頭の中にある音楽を外部に出力する回路が完全に破壊されていたのだ。
気分転換に旅行したりして、一瞬、回復したりもしたらしいが、結局だめで、事故から5年後に頭を開ける外科手術を危険を覚悟で受け、そのまま亡くなった。当時の脳外科の知識はまだ、原始的だったし、現在では、こういう症例では手術はしないと思われる。脳の神経細胞は、わずかな例外を除くと増殖することがないので、失われた運動性言語中枢を再生させることは出来ない。
いま、練習しているラベルのピアノトリオは、精緻な時計細工のような素晴らしい作品だ。民族的な旋律が、深く印象に残る。弾くたびに、こんなに美しく複雑な曲が、どうして頭の中で作り上げられるのだろう、と不思議に思う。
チェロ ピアノ 室内楽