はかせさんのブログ(日記)〜クラシック音楽の総合コミュニティサイト Muse〜

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危険な置き方

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 私のチェロの表板にはニスに白い傷跡がある。家でグランドピアノを全開にしてチェロソナタを練習していたら、ネコ(オス4歳。名前はムル)がピアノの中に入り、弦に触った。打鍵で弦が振動し、ネコはびっくりして飛び上がりピアノから飛び出した拍子に、私の譜面台にぶつかり、この譜面台がチェロの表板をヒットしたのだ。まあ、割れなくて良かった。

 チェロやヴァイオリン、ヴィオラは、繊細な部品を貼り合わせて作った、華奢な工芸品だ。長くその楽器を弾いてきた人は、本能的に、あるいは、痛い経験に学んだ末に、正しい扱い方をマスターしているので、あまり壊さないが、初心者はしばしば壊す。下の息子など、布団の上に弓をぽんと置いていたことを忘れて走ってきてころび、弓を3本にへし折った。こういうのは修理できない。そもそも、弓は修理が難しい。
 表板のコーナーに弓をぶつけて欠いてしまう事故も多いが、この時は破片を回収して楽器屋に持って行こう。元通り貼り付ければ修理完了だ。自分で木工ボンドで貼り付けるのはあまりお勧めしない。破片がないと、新しい木を足してコーナーを作り直さなければならないので、手間も大変だし、修理代も跳ね上がる。

 弦楽器は、結構ひどい状態になっても、楽器職人はなんとか修理する。横板が割れたり、横板と表板の間の接着がはがれたりしても、ほとんど気づかれないほどきれいに修理してくれる。友人の楽器職人は、阪神大震災のあと、チェロの修理がたくさん来て忙しく働いていた。消防の放水で水に漬かり、ばらばらになった楽器もほぼ元通りに修理できるらしい。

 修理が難しい場所というのがあって、表板の真ん中、駒の足が立つ場所と、内部の魂柱が立つ場所の付近だ。両者はごく近くになる。ここは一番力がかかる場所なので、割れた場合、ただ元通りに合わせて接着しても保たない。当て板を裏から当てると厚くなって性能が落ちる。元通り合わせて貼った後、内部から削って薄くし、そこにぴったり合うように別の木を内部から当てて接着し、元の厚みにまで削る、という難しい修理をしてもらうのだが、うまくいかないこともあるらしい。

 知人の楽器製作者は、結構有名な人の製作したチェロで表板が修理を繰り返して使い物にならなくなった、という代物を安く買い、表板だけ新しく作って交換したが、こうなると、脳移植みたいなもので、誰が製作した楽器と言うべきなのか、わからない。

 というわけで、表板が割れるような事故は起こさないように心がけなければならないのだが、楽器がひっくり返った場合、だいたい、駒が地面にぶつかり、その衝撃が表板に作用し、この危険領域を直撃する。
 ヴァイオリンは自重が軽いので、横板を下にして立てて置いたのが倒れたくらいで表板が割れることは少ないが、チェロは重い割に、板の厚みはヴァイオリンと大して変わらないので(表板は魂柱の位置で、チェロは4.5mm、ヴァイオリンは3.0mmくらい)、横倒しにしただけでもここが割れ、致命傷となる危険がある。

 合奏とか、オーケストラの練習で休憩になったとき、チェロをどう置いておくかに十分気をつけなければならない。
 最も正しいのは、いちいちハードケースに入れて水平に寝かしておくこと。私も借り物の楽器の時は必ずこうしていた。
 これが面倒な場合は、横板を下にして置くわけだが、必ずエンドピンは引っ込めておくこと。その辺を歩き回る人がいて、それが女性だと、だいたい友達の顔を見ておしゃべりしながら歩くから、下なんてほとんど見てはいない。それで、エンドピンに気づかず、足を引っかけてチェロを蹴倒すのだ。
 また、エンドピンを床に当てて、椅子の座面にチェロの横板のC字型のくびれを乗せて立てている人がいるが、これは自殺行為だ。太った金管楽器奏者が近くをどすどすと歩いただけでひっくり返り、駒が地面をヒットし、表板に食い込み、致命傷を与える。

 ヴァイオリンやヴィオラでも、椅子の上に立てて置いたり、弓を譜面台に横たえたままおしゃべりに遠征する人がいるが、怖くないのかなあ。

 チェロ ヴァイオリン(バイオリン)


日付:2007年08月30日

1件のコメント

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このブログ(日記)へのコメント

ネコがジャンプで譜面台が楽器に…
ヒヤッとしましたね。
割れなくてホッ…ですね。

その辺を歩き回る女性は友達の顔を見ておしゃべりしながら歩くから、下なんてほとんど見てはいない。それで、エンドピンに気づかず、足を引っかける…ありそうですね。お〜コワっ!

2007年09月02日 17時33分06秒

1件のコメント

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