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東京のチェロの先生は良い先生だ。大人になって始めてかなり上達している生徒が大勢いる。先生の教え方に不満を漏らす生徒は、私から見れば生徒の方に問題があるのだ。
東京芸術大学時代の同級生だった奥様のピアノも素晴らしく、この夫婦のデュオのコンサートは気品があり私は好きだ。ピアニストが、邪魔になるかならないかの限界を探るようにして積極的に弾く、ホットで有機的なソナタが聴ける。
チェロとピアノのためのソナタをレッスンして貰うときは、ピアニストと一緒に行き、先生ご夫婦を予約しておき、2対2で見て貰う。ピアノ同士、チェロ同士のコメントが多いが、ピアノからチェロへ、チェロからピアノへの注意も多く、4人でディスカッションになることもあり、非常に有意義なのだ。
もう十年以上前だと思うが、彼らが九州の地方都市でピアノトリオの演奏会を行った。学生時代から彼ら夫婦とトリオを組んでいたヴァイオリニストがその都市に住んでいる関係だと思う。
演奏会の後、楽屋に見知らぬ男性が訪ねてきたという。彼は先生に、「先生のチェロはすばらしい。私にチェロを教えて下さい。レッスンしにこの町に通って下さい、生徒は集めます。」と頼んだ。先生はびっくりし、どうせ集まらないだろうと思いつつも、「良いですよ。飛行機代と宿泊費が出るくらい集まれば月に一度位は来ます。」と答えたらしい。そして、何ヶ月か経って「集まりましたのでお願いします」と連絡が来たのだ。
それ以来、先生は毎月、飛行機でその町に飛んでいき、一泊二日滞在し、隙間無くスケジュールの組まれたレッスンをくたくたになりながら行っている。年に一度はおさらい会も行われている。
良い先生をどうやって見つけ、選ぶか、というのはそう簡単ではないが、地方都市に住んでいても、こうやってチェロの先生を確保することは出来る。演奏を聴き、好きになった演奏家に教えて貰う、というのが先生選びの王道だと思う。良い先生の演奏を見て聴いているだけで自然にこちらも上達する。
チェロ ピアノ