はかせさんのブログ（日記）〜クラシック音楽の総合コミュニティサイト Muse〜

　紫苑交響楽団　第１０回記念的演奏会を聴いてきた。といっても私は重症のブルックナーアレルギーなので後半のプログラムであるブルックナーの交響曲第６番を聴かずに帰った。世の中にはレバーを食べられない女の子とか、ピーマンを食べられない男の子、飛行機に乗れない指揮者？がいるように、ブルックナーを聴けない人間もいる、ということでお許しを願いたい。

　前半のプログラムであるベートーヴェン交響曲第５番ハ短調作品６７「運命」だけを聴いてきたのだが、素晴らしい演奏だった。このあと別のものを聴きたいとは思わない、充実した音楽経験をすることができた。演奏者の皆様に感謝します。
　私はほとんど、オーケストラを聴かないので、あまり批評家として適していないのだが、たとえば、一流のプロはもっと上手に演奏をするのかもしれないが、今日の紫苑の演奏は充分、良い演奏だと思った。この、ベートーヴェンの中期の傑作の魅力を完全に示してくれていた。
　指揮者の解釈は、情に流されず、曲の構造を誠実に表現していたし、オーケストラもよく、それを実現していた。
　フルート、オーボエなどの管楽器の首席たちはソリストだから、大変なプレッシャーがかると思われるが、実に魅力的な演奏を聴かせてくれた。
　弦楽器も首席たちだけでなく、テュッティの後ろの方まで情熱をこめて演奏していたし、あの難しい楽譜なのに音程のぶれも許容範囲内に収めていたと思う。あとでプレーヤの皆さんが録音を聴いたとしたら、あるいは、いくつかのミスに気づかれるかも知れないが、生の演奏を聴いていた聴衆としては、気持ちよく聴くことができたと断言できる。
　今日の演奏が気持ちよく聴けた理由の一つがティンパニの安定感だ。打楽器は一人で音楽をぶちこわすことのできるパートで、もし、私がフルオーケストラに入団するとしたら、チェロなんかではなく、ぜひ、打楽器を担当したいと常々思っている。それだけに、打楽器が不安定だと、他がどんなに良くても気持ち悪くなるのだが、今日の紫苑のティンパニを私は高く評価する。

　たまにオーケストラを聴くといろいろ発見もある。これだけ大勢で演奏するシンフォニーも、室内楽も、ピアノソナタも、時間は同じようなものだし、楽章構成も似ている。ベートーヴェンの場合、言っている内容も近いかも知れない。違うののは色彩感とダイナミックレインジか。
　室内楽と違って指揮者がいると、まあ、プレイヤは楽できる。アナリーゼの苦労とか、頭を合わせるとか、テンポを動かすとか、というのはたしかに、一人雇って専門にやらせておく方が合理的だ。室内楽でも雇ってみたら良いかもしれない。

　のだめカンタービレのテレビで、オーケストラのメンバーが勢揃いした後、キヨラが一人拍手を浴びながら出てきて挨拶する場面があって、「あんなことするわけ無いじゃないか」と毒づいていたら、今日、同じことをやっているのをみてびっくりした。最近アマチュアオーケストラではああいうのがはやりですか？女性だから？

　ひとつ、気になったのは、メンバーが三々五々おしゃべりしながらステージに入ってきて、ステージ上で練習したり、おしゃべりしたり、客席の友人に手を振ったりしていたこと。あまりに日常的じゃないですか。あがらないため？せっかく格好つけてプロと同じような衣装を着て、格好つけて音楽会やるんだから、その衣装にふさわしい身のこなしをしてくれた方が、お客も良い演奏を期待する気持ちが高まる。演奏が良かっただけに、そんな子供っぽいことをしなければよいのにと思った。

　今日の会場は我が家から名神使って１時間以内。良い演奏を聴いた後、雑踏や電車は後味をそぐので（甲子園帰りの阪神ファンの集団とか、宴会から出てきた酔っぱらいの集団なんかに出会ってしまうと、音楽会の好印象など吹っ飛んでしまう）、音楽会にはできるだけ自動車で行きたい。東京ではそれが許されない。関西に住むのも悪くない。

　チェロ　交響曲