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楽器製作には刃物をたくさん使う。刃物は研がなければ切れない。それで、刃物を研ぐことを覚えた。
小さい時から、父が包丁を研ぐのを見ていたが、教わらなかった。父は左利きなので、妙な手つきに見え、これをまねしてはいけないと思った。母に頼まれると父がいつも研いでいたので、常に包丁はよく切れていた。そうでない家庭があることを結婚してから知った。カミさんの実家の刃物はどれも全く切れない。だれも研がないのだ。切れない方が安全だと思っているらしい!
私もヴァイオリンを作り始めるまでは包丁を研げなかったので、ドイツ製の簡易研ぎ器で研いでいたが、これを使うと包丁の減りが早く、手元の部分が妙な格好にカーブしていった。
大学生の時、研究用の刃物の研ぎ方を習ったが、これは機械やガイドを使う。西洋風はなんでも大仰な道具を作り、素人でもこなせるように手だてを尽くす。日本風は道具立ては簡素だが、運用には名人芸を要する。仕事に使う刃物は他人には触らせず、自分で管理する。電子顕微鏡用の切片を切るナイフはダイヤモンドで出来ていて50万円くらいするし、ちょっとしたハサミでも上等だと数万円くらいする。大事に使わないと研究費が無くなってしまう。
ロンドンでよく工具店に通ったが、充実していた。イギリス人は、なんでも自分でやるのが好きなのだ。家の管理の大事なことは他人に任せない、という考えがあるようだ。つまり、電気工事や水道工事にやってくる労働者なんて信用できない。大事な工事だから自分でやったほうが信じられるのだ。私も全く同じ考え方だ。他人より自分を信じる。先日も、家の台所の混合水栓(レバーを回せばお湯が出るやつ)が壊れたが、水道屋に相談すると水栓ごと全部取り替えるという。業者なんてそんなもの。部品を調べて取り寄せ、自分で交換して修理した。
ロンドンの工具店を見ていると彼らの研ぎに対する考え方が分かる。まず、回転式のグラインダー、そしてやすり。刃物が減っていくことに抵抗がないのだ。研磨油を使うオイル・ストーン(油砥石)や日本製の水で研ぐ砥石も売っていたが高級品扱いだし高価だった。
普通のカンナ、平ノミは、刃の裏は平面を維持しておき、斜面になっている部分を平面に研ぐ。2枚の平面が交わると直線ができる。大工なんかは手で持って上手に研いでいるが、あれには年期がいる。西洋式は、刃を保持し、一定の角度に傾けて砥石に当てる台(ガイド)を使う。これさえあれば、素人でもちゃんと研げるのだ。
その前提になるのは砥石が平面になっていることだ。同じ砥石を二枚持っていて、使うたびにこれをこすり合わせて平面を維持しておく。この砥石は真っ平らに研ぐ刃物にしか使わない。
内丸の丸ノミはこの原理では研げない。水平面でドーナツ型の砥石が回転する研ぎ器を使って研ぐ。
スクレーパという刃物を多用する。これは使い捨てのノコギリの刃を小判形など自分の好きな形に切り抜き、形を整え、周囲を研いで作る刃物だ。これも砥石で研ぐが砥石に溝が掘れてしまうので、カンナ、平ノミ用の砥石は使わない。別に雑用の砥石を用意している。ナイフ類はこの砥石だ。
包丁もこの雑用の砥石で研ぐ。菜切り、牛刀、出刃の三本を気が向いたら研いでいる。自分で料理して、タマネギを刻んで目が痛くなったらすぐに研ぐ。切れなくなるとトマトの切り口が汚くなる。刺身も不味そうになる。ナイフを研いでいるうちに包丁も研げるようになった。最初はすぐに切れが止まったが、そうなったらまた研げばよい。しょっちゅう研いでいるうちにだんだん上達する。
楽器を作るようになって、刃物オタクにもなった。上等のノミをぴんぴんに研いで、表板を削ると、それだけで快感がある。スポーツカーでちょっとしたカーブを曲がる感じのようなものだ。研ぎ上げた菜切りで熟したトマトをすっと切るのも楽しい。
チェロ ピアノ