はかせさんのブログ（日記）〜クラシック音楽の総合コミュニティサイト Muse〜

　どんな家に住むかによって、音楽生活は大きく影響を受けるので、家選びは慎重に行う必要がある。

　結婚したときに公務員宿舎に入居した。給料は安かったし貯金など一銭もなかったから、現実的な選択だった。数箇所選べた中から、通勤時間が３０分くらいの宿舎を選んだ。職場に近すぎると休日に実験動物の世話に来させられたりするし、仕事で嫌なことがあったとき（日常的に発生する）、クールダウンする暇がない。
　ここは各省庁に勤める公務員がごちゃごちゃに住んでいる大規模アパートだった。古く、狭い。防音など不可能だったが、日中は音を出しても構わない、という暗黙の了解があって、夜８時までは弾けた。アップライトピアノしか置けなかったが、時々ヴァイオリン弾きがやってきてトリオをやっていた。いずれにせよ、何かするためには、物を大移動するという生活だった。狭かったので、置く場所がないために物が買えない。それで貯金が出来たのが幸いだった。子供を授かるまでに６年かかったので、家を買う頭金が貯まった。

　公団の分譲住宅が売り出され、ＪＲの駅まで歩けるし、通勤時間も適切なので申し込んだ。隣家と壁１枚を共有する２戸連住宅だった。いろいろな間取りがあったが、迷わず、１階に広い部屋がある間取りにした。グランドピアノの脇で弦楽四重奏を！他はどうでもよかった。９倍の競争率だったが、幸い当選し、この家を購入した。

　１階に13.5畳のリビング・ダイニングと隣接するキッチン、風呂、トイレ、収納があり、２階には田の字状の４部屋というもの。下の子がお腹にいたが、それでも１部屋自分で確保し、工作室にすると宣言した。チェロが作れる。
　ツーバイフォーで、床強度にやや不安があったので、グランドピアノを置く位置を多少補強して貰い、東京中うろついて選んだグランドピアノを置いた。
　住宅公団は日本中に同じ作りの家を作るせいか、設計とか部品の選定とかがすぐれていた。よく考え抜かれていて、設計者の能力に感心した。狭い敷地ではあったが非常に快適な家だった。工作室から屋根裏に入れるハッチがあり、屋根裏をラジコン飛行機置き場にできたのがありがたかった。ラジコン飛行機は大きく、場所を取るのだ。
　合奏にもとても便利で、弦楽６重奏が楽にできたし、コントラバスがやってきてシューベルトの「鱒」の五重奏も弾いた。
　なんの防音もしなかったので、ピアノの音は多少漏れていたが、かなり効果的に音を止めてくれる家だったし、一番迷惑をかけるであろう隣家の娘にカミさんがピアノを教えていたせいか、文句は出なかった。いずれにせよ、夜８時以降は自粛した。

　転職してこの家を売ったとき、結局700万円くらい損をしたけれど、１５年くらい住んだし、とても快適だったので文句はない。転居してしばらくは賃貸の一戸建てに住んでいたが、せまく、ぼろでなおかつ毎月高い家賃を取られる。前の家よりかなり狭く窮屈だったので、２ヶ月で、引っ越すことにした。
　インターネットで調べ、駅から楽に歩け（バスは嫌いだ）通勤時間が適正で、ピアノ五重奏が出来るという中古の一戸建ての家を選び出した。不動産屋に電話をし、最初に見た家に即決した。カミさんには知らん顔していたが２台分の駐車場がついていたので決断した。前の家では小遣いで近くに駐車場を借りてスポーツカーを持っていたのだが、今度は駐車場代が浮く。

　今もこの家に住んでいるが、公団の家に比べると、建てた人の頭の悪さが目につく、ちぐはぐな家だ。クロゼットのハンガーを掛ける棒の上の隙間が少なくてハンガーがなかなか入らないとか、トイレにタオル掛けが無く、なおかつ、壁が全部石膏ボードでタオル掛けをつけようにもクギが立たないとか、トイレや風呂などのパーツが、何か原因があって不人気になった商品ばかり。きっとコストと見た目だけにこだわった建て売りだ。
　今度の家も２階に４部屋は同じで、また、一部屋確保できた。だいぶ狭くなってけれど。１階は６畳の和室と１５畳程度のリビング・ダイニング・キッチン。買うときから、弾く部屋とキッチンが一緒はよくない、と分かっていたが、贅沢は言えない。
　やっぱり敷地は狭く隣家が迫っているので防音した方がよいだろうと、窓を全部二重にした。多少、効果はある。外にいて、弦楽器の音は全く聞こえない。ピアノは多少漏れるが、隣家で窓を閉めてくれれば聞こえないだろう。隣家の奥さんはときどき窓を開けたままピアノを弾いたり歌を歌ったり（ママさんコーラスで歌っている）しているので、平気らしいし、反対側はいつも窓を開けっ放しで、夫婦が交互に子供をヒステリックに叱りつけているので、こちらも神経質ではなさそう。
　とりあえず、ピアノ５重奏までできるので、合奏の練習のために場所を借りる必要はない。合奏の練習をしていると料理やお茶の支度が出来ないが、まあ、仕方がない。楽器をしないお客は一切家に入れないのであまり不都合はない。チェロを弾いているとカミさんや息子たちに、音程が悪いだの、楽器が鳴っていないだの、リズムがどうしただの、言われるのが頭に来る。そのうちリフォームか建て替えをして、間取りを変え、音楽室＋ダイニング・キッチンにしたいと思っている。

　チェロ　ピアノ