はかせさんのブログ（日記）〜クラシック音楽の総合コミュニティサイト Muse〜

　大学に入った時、すぐに大学のオーケストラの部室をのぞいて、そこにいた部員に自己紹介し、電話番号を置いてきた。入部しても良いと思っていた。でも、オーケストラから電話がかかってくる前に、別口から勧誘されて、その大学とは関係ない、室内オーケストラに入った。この室内オーケストラには２年いたが、指揮者とコンサートマスターが喧嘩して消滅し、それからは室内楽ばかりになった。
　こちらに決めた直後に大学オーケストラから電話がかかってきたが、そいうわけで断った。ここの電話のタイミングが人生の分かれ目だったかもしれない。この大学オーケストラに入って何年も留年したり、プロを目指したりした人間は多いのだ。

　時々思うのだけれど、あのとき、もし大学オーケストラから先に電話がかかってきたら、そちらに入っただろう。そうだったら、今頃オーケストラプレイヤーになってどこかで弾いていたのだろうか？

　今の私は絶対にオーケストラで弾くことはできない。
　まず、嫌いな作曲家、嫌いな楽曲が多い。すぐにその曲は弾かない、聴きたくもない、というだろう。室内オーケストラ時代にも、ブリテンのシンプルシンフォニーに対して拒否権を発動して大騒ぎになったことがある。
　また、自分がいてもいなくても構わず音楽が進行していくのに耐えられない。自分が失敗したら、音楽全体が崩壊する、というパートでないと悲しい。

　それになによりも、あのガクタイ用語を聞くたびに虫酸が走る。勇気を出していくつか書いてみるけれど、次のような四音節の略語はすべて嫌いだし、夕方に「おはようございます」と挨拶されるのも嫌いだ。
　
コンマス、コンミス、ゲネプロ、パーリー、ブライチ、ベトシチ、モツレク、モツニク、ドボコン、チャイコン、スルポン、メントリ、メンコン

　オーケストラに入ったら、こういう言葉の嵐の中に身を置くことを拒否できないと思う。人格、技量の高いプレイヤーだって時々使うし、好んで使う人はどこにでもいる。カンタータをやっていても通奏低音のことを、つうてい　とよぶ下手くそがいたりする。上手で趣味の合う人は（少なくとも私の前では）ほとんど使わないので生きていける。

　もし、あのとき、大学オーケストラに入部していたら、こんな言葉を聞いても平気な人間になっていたのだろうか？もっと信じられないが、平気でこんな言葉を口に出来る人間になっていたのだろうか？

　チェロ　ピアノ