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我々の脳の中に「報償系:reward system:reward とはご褒美のこと」とよばれるシステムがある。まだ全貌が解明されていないが、行動結果に対する報償(ご褒美) として快感を生じさせるしかけが脳の中にある。ある条件が揃うと、脳内の神経細胞から麻薬様物質(モルヒネによく似た化学物質である、エンドルフィンとかエンケファリンとか)が分泌され、その結果、気持ちよいと感じる。この気持ちよさを再度味わいたいという思いが、行動の方向を変えていく。
気持ちよくなると、自律神経活動に変化が生じるので、動物でもこの現象を研究することが出来る。ネコなんて目やしっぽを見ていれば自律神経活動の状態が簡単に分かる。
情動系(恐怖、怒り、悲しみ、喜びなどの感情を引き起こす脳の部分)とも関係があって、ここで喜びの感情が生じると、報償系に信号が送られて、麻薬様物質がじゃぶじゃぶ出て気持ちよくなるらしい。
報償系が働いて快感をおぼえる場面にはいろいろあるが、ある行動を起こす前に結果を予想していた場合、結果が予想と一致すると、報償系が作動し、気持ちよくなるということがあるようだ。前もってイメージした通りにものごとが進行すると、麻薬様物質が脳の中で分泌され、快感を引き起こすわけだ。
「ほら、思った通り!」とか「予想がばっちり的中!」とか「試験でヤマかけたら大当たり!」とかの際の快感はこれで説明できる。多くのスポーツで感じる快感もこれだ。テニスで自分の思ったとおりのコースにショットが決まった時とか、自分のヨミ通りに相手が動いた時とか、みなそうだ。
ここで大事なのは予想した場合、という点だ。先にイメージを持っていなければならない。試験で普通に問題が解けた時より、ヤマをかけて当たった時の方が嬉しいし、テニスでも当たり損ないで相手に届かない場所に球が落ちた時より、自分がコントロールしてその場所にボールを落とせた時の方が気持ちよい。
上等の道具を操っている時の快感もたぶんこれだ。金属製の上等のカメラとか、切れる刃物とかは、使い手の予想と寸分違わずに操作できる。もちろん、第一級のスポーツカーも、この快感をもたらすために存在する。贅肉を極限まで切り捨てて軽くするのも、エンジンをキャビンのすぐ後ろに積むのも、パワーステアリングもブレーキの倍力装置もABSも付けないのも、予想、操作と結果の間に余計なものを介在させないためだ。
この場合も、そういう道具に習熟していて、結果を予想できるだけの技量の持ち主だけが、快感を覚えることが出来る。初心者はどんなに良い道具を使っても、結果に対する明瞭なイメージがないので気持ちよくなれない。当然道具の良さも理解できない。「なんでそんな役にも立たない車が要るの?車なんて皆同じじゃないの!」などと言われても、平然としていればよい。
最近思うのは、チェロという楽器もそうだろうということ。どういうチェロが良い楽器なのか、という問に答えることは難しい。音量が大きい楽器?音色の美しい楽器?そういうことではないだろう。やっぱり、弾き手の想いに応えてくれる、ということだと思う。小さく弾きたければ小さい音が出る、不用意に大きな音が出たりしない。イメージしたとおりの音色が苦労なく出てくれる。予想したイメージと結果との間の差が無い。
今年、ずっと愛用していたチェロを手放したが、その時、そのチェロと自作のチェロの優劣ということをずいぶん考えた。手放した方は、ちゃんとしたプロが手作りしたもので、非常に美しいし正確に出来ている。音量のバランスも良いし、レスポンスも良いし、持ち声も良い。その楽器を手放し、私という素人が、何も分からないままに作った最初のチェロを残す、というのは常識では考えられないことだ。
それでも、そういう決断をしたのは、自作の楽器の方が、イメージ通りの音楽を実現するのに余計な操作をしないで済むからだ。ある程度経験を積んだプレーヤーなら、どんな楽器からでも自分のイメージの音楽を引き出すし、自分らしい音を出すだろう。でも、とても苦労して実現しなければならない楽器もあるし、ただ、音楽のことをイメージしていれば実現できる楽器もある。後者と暮らす方が苦労が少ないし、脳内の報償系も活発に動く。すると快感を求めて、また楽器に向かう。
チェロ ピアノ