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今月末の音楽会で、ベートーヴェンのチェロとピアノのためのソナタ第4番op.102-1を弾くが、ヴァイオリニストの都合が付いたのでドビュッシーのピアノトリオ・ト長調も演奏することになった。しばらく練習を積んでいたけれど人前で弾くのに日程が合わず、お蔵入りしていた曲だ。
ドビュッシーのとても若い時期の曲だが、どこかの図書館とかに眠っていた楽譜を元に1986年に初めて出版された。発掘された感じだ。
なぜか、ラヴェル、ドビュッシー、フォーレのピアノトリオがまとめて収録されたCDがよくあるので、何となく聴いていたがあまり強い印象を持たなかった。なにしろ、ラヴェルは凄い曲だし、フォーレも強烈な印象を与えるから、これと一緒だとかすんでしまう。練習してみると、チェロパートの難しいこと!チェロの魅力は理解しているが、奏法については無知、という印象だ。左手の動きが全くチェロ的でない。また、終楽章なんかで、ヴァイオリンより高いパッセージが続き(オクターブ下げても良いなんて書いてあるが、下げて弾くとおかしい)きっちり練習しておく必要があるのだ。
ヴァイオリニストが、「これはチェロが主役」と言ったとおり、なかなかチェロが目立つ曲だ。終楽章はまるで歌謡曲のようだ。全体にテンポ設定が難しい。一つの楽章の中に複数の要素があり、それぞれが固有のテンポを必要とする。だから、楽章の途中でかなり大きくテンポを変化させなければならず、その細工に苦労する。
この曲を弾いていて感じるのは、若さと饒舌だ。たとえばブラームスの1番(op.8)のピアノトリオのオリジナル版に似た感じだ。ブラームスは若いときに出版したこの曲を晩年に全面的に改訂しており、みな、この改訂版で演奏するが、オリジナル版も手に入る。こちらを弾いてみると、旋律がたくさん使われ、形式もごちゃごちゃしているのだ。ドビュッシーのトリオもたくさん旋律が出てくるし、いろいろ凝っている。この辺が若さゆえの力こぶ、という印象を与える。自信満々で、持っているものを全部見せびらかそうとしている。
ベートーヴェンなんかでも若いときの作品は耳に楽しい旋律がたくさん出てくるが、後期になると旋律なんかどうでもよい、という印象を受ける。4番のソナタは後期らしい作風で旋律要素は簡素だ。メロディより構築で聴かせる。
チェロ ピアノ