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レッスンの憂鬱

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 こちらのチェロの先生にはだいたい月に一度のペースでレッスンを受けている。これは意図したことではなく、自分でやれるだけやったという状態になったら電話して予約するようにしていたら、こういう間隔になったのだ。
 ベートーヴェンのソナタなど持って行って、そこに問題があることを認識していなかった点を指摘されると、とても恥ずかしい。しっかりアナリーゼして、自分なりに仕上げてから行っている。

 アマチュアの大人の生徒を教える場合、プロの先生は甘いことが多い。山崎伸子さんなんか、東京芸術大学の学生に対してはものすごく厳しく、口汚いらしいが、アマチュアに対してはとても優しいという。そういうことがあるので、今の先生には常々、「一度注意して貰ったことが出来ていなくても、あきらめずに何度でも言って欲しい」「私に出来ることでも出来ないことでも、気付いた点はどんなことでも注意して欲しい」とお願いしている。

 そのせいか、レッスンは非常に厳しい。一度たりとも褒められたことはない。いま、先生は私の楽器の鳴らし方が不十分であること、高音域の音が萎えること、に注目しているらしく、繰り返し注意を受ける。「ちょっと貸して下さい」と言って私の楽器を弾いてくれるのだが、先生が弾くともの凄い鳴り方をするのだ。自作のチェロにはまだまだ潜在能力があるのだ。さすが、フルオーケストラをバックにチェロ協奏曲を弾くソリストだ。
 先生は様々に工夫して、その奏法を私に伝えようとしてくれるのだが、なかなかできない。どうやら、その奏法に必要な筋肉(各指にある虫様筋と骨間筋というマイナーな筋肉)の鍛え方が両手とも足りないらしいのだが、筋肉トレーニングの方法が難しい。

 経験を積んだアマチュア演奏家、たとえば、オーケストラの首席とかを弾くような人には、自分の演奏に自信たっぷりの人をよく見かける。私も、この先生にレッスンを受ける前はそうだったと思う。自分の周囲に上手な人がいなければ、自然、そうなるだろう。東京の先生にずっと習ってきたが、この先生はよく褒めてくれる先生で、「それだけ弾ければもう、プロですよ」などとよく言ってくれるので、その気になっていたようにも思う。

 しかし、ソリストとして活躍中の演奏家に本気でレッスンして貰うと、自信など粉々にされる。次のレッスンまでに多少は成果を出さないと見捨てられるような気がして、一生懸命練習している。練習時間も増えた。

 しかし、音楽大学の学生をやっている息子を見ていると、若さが違う、スタート地点が違う、練習の効率と密度と絶対量が違う。日暮れて道遠し、という気分で憂鬱になってくる。

 褒めてくれる人だけに囲まれて生きている方が精神状態は良いのだろうな。

 チェロ ピアノ


日付:2007年11月09日


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