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おさらい会で年に一度会う友人達が使っているチェロはだいたいどのようなものか、わかっている。私は気楽に他人の楽器を触らせて貰うし、持ち主が弾くのを見ていれば、どんな楽器か想像はつく。
今年、3人が楽器を換えた。こういう時は去年までの演奏と今年の演奏はどうちがうのか、なぜ、その人はこの楽器に換えるという決断をしたのか、ということを興味津々で見るのだ。
ある女性は、普通の新作の楽器から、100年以上経っている、癖のある楽器に替わった。これまではどちらかというとテクニカルな方にがんばっていたようで、派手めな弾き方だったと思うが、今年はブラームスの1番のソナタの第1楽章をしっとりと演奏した。今年の楽器の持つ低音の癖に引きずられたように、この曲に多用されている低音域を楽しんで演奏していた。彼女は良い楽器を手に入れ、とても幸せだと思う。
この楽器は同門のある男性から購入したもので、売った男性は、新作楽器を買った。たぶん、高音域のパワーに惹かれて買ったのだろうと思わせるような弾き方で、カサドの愛の言葉を弾いた。この楽器がこの曲を選ばせたのではないか、と思うほどマッチしていた。しかし、低音域の陰影は明らかに失われ、私にはこの買い換えは失敗だと感じられた。まあ、ハートの熱い男だから、これから楽器を調教してなんとかするつもりだとは思うが。
別の男性は、中国製の初心者用の楽器から、日本人製作者の作ったハンドメイドに替わり、弓も同じ作者のものになった。この男性の性格は地味で安全第一なのだが、楽器もまたどんぴしゃり一緒なのが実に可笑しい。両者ともに華がない。地味な顔をして、地味な音色でボッケリーニのコンチェルトを弾いた。聴いていて面白くはないが見ていて可笑しい。
ペットは飼い主に似ると言うが、飼い主もまたそのペットに似てくるようだ。演奏者は自分の性格に近い楽器を選んで安住するというのも一つの生き方だが、自分にない性格の楽器を選んで自分の性格を変えていくというのもありなんだろうな、などと考えながら聴いていた。
私の場合、自作のチェロだから、どんぴしゃり自分の性格の楽器なわけで、自分自身を向上させていくしかない。
チェロ