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シャルルさんは、薔薇が好きだ・・・(小原 なお美さん)

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チェロを弾くことも、楽器を作ることも、その他の道楽ごともすべて、遊びである。仕事ではない。しかし、これが楽しみのためにやっているのか、というとそうでもないような気がする。時々、何もわかっていない人から、「良いですね、老後の楽しみがたくさんあって。」とか、「音楽を演奏するのって楽しいのでしょうね。」とか、「うんと楽しんできてください。」とか言われたりするのだが、返事のしようもない。
伊丹十三の「ヨーロッパ退屈日記」は、私の人生に決定的な影響を与えた本の一つだが、次のように書かれている。「ところで、ヴァイオリンというのは実に不愉快な楽器である。弾いていて愉しいということはほとんどありえない。ヴァイオリンを弾くということは、不正確な音程、穢い音、不正確なテンポ、即ち不快感との絶え間ない戦いである。この不快感は、技術が進歩して、耳が敏感になってくると一層増大するからしまつが悪いのである。」
チェロを弾いていて楽しさを感じることなどほとんどない。家で一人で練習しているとき、頭を占拠しているのは、自分の演奏を厳しくチェックすることと、できない部分をどういう練習法で練習するかを考えること、そしていつまでたっても満足からほど遠い自分のチェロ演奏に対するいらだちだ。楽しみなんて詠嘆調の言葉が出てくる状況とは無縁だ。
合奏の練習の時、頭を占拠しているのは、ちゃんと使命を果たすこと、常に状況をモニタし自分がなすべきことを瞬時に把握すること、全体を見渡して曲を正しく理解しているかをチェックすることだ。この場で個人練習すべき課題を発見しておかなければならない。楽しさなどどこにあるのだろう?
演奏会の本番でも、お客様の前で演奏できる幸せなんてものを感じている暇など無く、次々に現れる複雑なタスクを正確に処理しつつ、予想外の出来事に適切に対処することに意識のほとんどを傾けている。演奏後、うまく演奏できて幸せと感じる瞬間が無いわけではないが、そのために音楽をやっているとは到底言えない。大小様々な失敗の記憶とか、それが、大事故につながったかもしれないという恐怖とかの方が遙かに大きい。練習の時、厳しく演奏の品質をチェックする癖がついているから、本番の自分・自分たちの演奏についても、非常に辛口に評価してしまうので、満足感からくる幸せなど、ほとんど感じることはない。
楽器を作る上でも、楽しい瞬間はごくわずかだ。延々と同じ作業を繰り返している時間は長いし、体のあちこちをいじめるし、しょっちゅうけがをするし、失敗して何日もの作業がすべて無駄になることも多い。自分の技術のなさ、頭の悪さを呪っている時間は長い。
友人の整形外科医が、「すべてのスポーツは、つきつめて上達していくと体に悪い、プロのレベルのスポーツは例外なく体に悪い」と言っていたが、すべての道楽ごとは、つきつめて上達を目指すと、辛いことが果てしなく増える、と言えるかもしれない。プロになって金でも稼がないとやっていられない、という気分になっても不思議はない。そのプロたちも人に見られている時は幸せを装っていることもあるけれど、日常ではほとんど修行僧のようだ。
チェロ ピアノ