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人の身体について知ることを職業とするようになって深く納得したことはたくさんあるが、その最たるものは、「どの人もほぼ同じ作りになっている」ということだ。当たり前のことだが、私もロストロポーヴィッチもゲリンガスも、ほぼ同じ格好の骨を持ち、同じような形の筋肉を持ち、それらに同じような神経と血管が分布している。
それなのに彼らには私のできないことができる、というのは、思えば不思議なことである。トレーニングによって、彼らの筋肉のいくつかは私の同じ筋肉より強化されているかもしれないが、大差ではないだろう。演奏のビデオなんかを見ていると、手が特別製のように見えるが全然そんなことはない。何といっても大きな違いは脳なのだ。
脳は非常に可塑性がある臓器だ。つまり、使い方によって大きく内容が変わる。肝臓や腎臓のような臓器を、使い方で強化するのはあまり現実的だとは思わないが、脳を変えることは可能だ。正しく信号が流れた神経回路は強化され、信号が流れやすくなり、使われなかった回路は枯れていく、という原理だから、同じ回路を繰り返し使う=繰り返して練習する、ことで脳を変えていくことが出来る。間違いを混ぜると、その間違い回路が強化され、何度も同じ間違いを繰り返すようになるので、気をつけなければならない。練習によって変化しているのは筋肉ではなく脳なのだ。
一見同じように指を上げたり下げたりしているように見えても、どのような全体像の一部として、その運動を捉えているかは、人によって思いもよらぬ差がある。楽器演奏で、ゲリンガスにできて私にできないことがあるのは、どうやら、この全体像が私の場合正しくないことに原因があるらしい。こいうう事も、もちろん問題は脳にあるのだ。
こちらでチェロを教わっている先生は一級の演奏家だ。この先生のレッスンを受けていると、ソリストがどんなことを考えているかがわかり、それだけでも興味深い。この先生は間違いなく理科系の頭脳を持っていて、ホットな音楽性を実現するために、クールな戦略を立てているのだ。演奏上のすべての問題点は、根本的で単純で修正可能な肉体の動きとして抽出され、解決される。そして、単純な戦略をうまく構造化して、ダイナミックな音楽の全体像を描き出している。
彼の体型はごく普通で指はほっそりしており、この先生に習っていると、筋肉、骨などはどんな人でも大差なく、名人、天才というのは結局脳に宿っていることを実感する。できない人間というのは、要するに、頭が悪いのだ。だとすれば、常に自分で考え、練習方を考案することでもっと自由に、自分か感じているように演奏できるようになるだろう。
何か明るい未来を感じるようになるレッスンなのだ。
チェロ