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マタイ受難曲

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 日本の自動車ジャーナリストで最も重要な一人である小林彰太郎氏は、「もしこれからの一生、たった1台のクルマしか持てないと告げられたら、僕は躊躇いなくランチア・ラムダを選ぶ。なかでも1926年以前の初期型ラムダがいい。そして、同じ質問を受けてロールス・ロイス・シルバーゴーストと答えたアラビアのロレンスのひそみに倣って、それに生涯乗れるだけのタイアを添えて、と付け加えるだろう。」と書いている。
 私なら、今乗っているロータス・エリーゼを選ぶ。

 こういう話はよくあって、もし、無人島に流されるのに一曲だけレコードを(今ならCDか)持って行けるとしたら、何を持って行くか?というヴァリエーションを読むこともある。日本の著名な音楽評論家がバッハのマタイ受難曲をあげていて、これは良い手だと思った。この曲は長いし、コーラスあり、器楽協奏曲あり、アリアあり、トリオソナタありで変化に富むので、聴き手の精神状態に合わせて曲が選べる。一曲でそうとう楽しめる。

 先日、「神は妄想である」という本を読んだ。著者はリチャード・ドーキンスという進化生物学者。彼は名著「利己的な遺伝子」で大きなインパクトを与えてくれたのだが、骨の髄からのダーウィン主義者である。宗教家からケンカを売られることが多く、売られたケンカは買うタイプらしく、あちこちの宗教論争に参加しているらしい。そして、宗教を徹底的に攻撃したのがこの「神は妄想である」という本だ。全篇、宗教がいかに馬鹿馬鹿しく、有害な存在であるかを書きつづった本だ。といっても罵倒する相手は、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教の3つで、仏教は相手にしていないのが仏教に親近感を持つ私にはちょっと残念だ。ケンカを読んでいるのはだんだん鬱陶しく、馬鹿馬鹿しくなり、途中から読み飛ばしてしまった。
 この本でおかしかったのは、例の「無人島に一曲レコードを持って行くのなら−−」というのを書いていて、ドーキンスの選んだのがバッハのマタイ受難曲か、ベートーヴェンの14番の弦楽四重奏曲op.132というところ。宗教は嫌いでも、宗教曲は好きだ、というところがいかにもイギリスのインテリらしい。

 チェロ ピアノ


日付:2008年04月11日


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