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見えているけど聞こえない

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前回の続きのような記事を書きます。

アルゲリッチが2010年の年末に来日した時に演奏した
シューマンのピアノ協奏曲のライブ録音をCDで聴きました。

私は、アルゲリッチのこともよく知らないままでいますが、とにかくもの凄く高い技術力をいかんなく発揮して情熱的な、
場合によっては阿鼻叫喚とも思えてしまうような激しい演奏をするピアニストというイメージがあります。

私をクラシックの世界に誘ったピアニストは、
奇しくもリヒテルでしたが、一面的にしか捉えていないのだとしても、
このようなタイプの演奏家が実は少し苦手です。

今回聴いた演奏も…もっと聴き込む必要があるのかもしれませんが、なぜか今の私の心にはあまり響いては来ませんでした。


昨年来、音楽を聴くにあたってバイブルになりつつある一冊の本があります。田村和紀夫氏の著作でその名も「名曲に何を聴くか」。
この方の著作には姉妹編もあって、「名曲が語る音楽史」という本もあります。(共に音楽之友社刊)

後者の本についてはまだ未読ですが、この方が書かれている内容は、浅すぎず深すぎず、理解するにはある程度の理論的な知識も必要とはなりますが、一愛好家が楽しむには十分な内容であると思います。

少し引用してみましょう…引用のまた引用にはなってしまいますが。
元々は指揮者ワルターの著作からの言です。


 「私はすべての聴衆に証人になってくれるよう要請
  するが、普通(の演奏で)は、すでに4小節目
  から、つまりピアノの激しい導入の3小節のち
  に、もうアレグロは終わりになってしまう。
  (中略)
  始まったときの速度で先を続けずに、指揮者
 (オーボエで出る)第1主題をもっとゆっくりと
  したテンポとセンチメンタルに傾いた柔和な
  表情で開始する。」

 「さてそこで、どうか一度楽譜を見て確かめて
  くださるよう、読者にお願いするが、第42
  小節目のf(フォルテ)にいたるまでの間、
  シューマンは何のテンポ変更も記していない
  のである。」


引用されているワルターの言説はさらに続きがあるのですが、長くなり過ぎるので省略するとしても、
田村氏がここで言おうとしていることは、
テンポだけの問題に関わらずもはや慣例となってしまった演奏に実は、この曲の根本的な構想に関わる問題をはらんでいるという内容になります。

興味を持たれた方は、是非、著作にあたってみてください。


さて、アルゲリッチの演奏に戻りますが、彼女の演奏に油断はできません。第1楽章の始まりから露骨にアゴーギクが挟まれますが、
そこに違和感を覚えるかどうかはともかく、テンポはまさにアレグロでしょう。

そして、展開部のアンダンテ…この楽章でもっとも美しい部分。
ソロのクラリネットとの掛け合いは、本当に美しく迫るものがあります。
つまり明らかにテンポ設定の影響ではないところで、
私にとってはより深いところまでは入り込めない演奏でした。

聴き込むほどに、その感慨が変わってくれると良いのですが、それがいささか悲しくもあり、
何より残念なのが単に好みの問題なのではなく、もっと的確なところで聴いた音楽を言葉に表すことのできない今の自分の問題ということになります。


結果として当たり前に思うことではありますが、
知識を深めるだけでももちろん駄目で、逆に感情表現だけに磨きをかけても主観論で終わってしまうということです。

たまに拝見させて頂いている某ブログにて、アーノンクールの著作の紹介がありました。
この本もできることなら読んでみたいのですが、今月は早くもCDを買ってしまいましたし、何よりも時間が欲しい!

非常に悩ましいところです(笑)

…ということで、今夜は早々に寝ます。

 作曲家 交響曲 ヴァイオリン(バイオリン) チェロ 室内楽


日付:2012年04月10日

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