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バッハ・レーマン音律について

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レーマン氏自身の手によるWebサイトを見つけました。
 
Johann Sebastian Bach’s tuning
http://www-personal.umich.edu/~bpl/larips/index.ht...

平均律クラビーア曲集の自筆原稿表紙の模様が音律を示すのではないか、という解釈による音律としては画期的な発表で、2004年当時、注目を集めました。
 
興味深いのは、その後、同じ模様を違う解釈で音律として再現したものや、それ以前に発表されていたバッハに由来するとされる音律についてのレーマン氏の所見が次のページで述べられていることです。
 
http://www-personal.umich.edu/~bpl/larips/bachtemp...
 
ここで述べられているレーマン氏の所見から伺える事は、どうもレーマン氏は、中全音律についてきちんと理解していないし、理解しようともしていないという事です。端的に言えば、現在主流の12等分平均律よりも美しく響く音律以外には興味が無いように見受けられます。
 
古典音律には色々あって、現在の価値観で測るなら何の価値も無い、という音律も少なからずあるでしょう。同時に、バッハの音律が現在の我々の価値観で測った時、価値のあるものであるかどうかという点について、何の約束も無いのです。それがやはり素晴らしいものである可能性もありますが、そうではない可能性を最初から排除してしまうという態度には問題が有ります。それではまるで歴史修正主義者のようです。
 
私はこの一連の流れの中で発表された音律としては、2005年のE.Jobin氏の案を推しています。その理由は次のとおり。
 
・Jobin氏の案は、キルンベルガー第3音律にかなり似ています。キルンベルガーはバッハの弟子であり、キルンベルガーの音律と、バッハの音律がかけ離れたものであるとは考えにくいのです。(一方、レーマン氏の提案は、キルンベルガーの音律からかけ離れすぎていることを理由に、支持できません。)

・Jobin氏の案は、ラモーの音律から影響を受けている様子も伺えます。純正より広い5度をラモーの音律と似た位置に配置しているのです。ラモーとバッハは、ほぼ同時代の人であり、ラモーがフランスで巻き起こしたハーモニーに関する議論は、いちはやくドイツ語にも翻訳され出版されていました。バッハがそれを知っていた可能性は十分あり、ラモーの主張を取り入れる事は、当時としては先進的なものだったかもしれません。
 
・レーマン氏は装飾の模様をさかさまに見て解釈していますが、この点について合理的な説明はありません。ただの思い付きです。Jobin氏の案はふつうに正面から見て解釈していて、こちらの方が説得力があります。
 
つまり音律の歴史という観点から時代考証するなら、Jobin氏の案の方が自然なのです。
 
 
一方、レーマン氏によるJobin氏の案に対する批評は、次のような物でした。 

(Google翻訳)引用ここから====================
2005年5月に私の記事の前半から作成したEmile Jobinは、 バッハの図表を解釈するさまざまな方法からの1/4 SCリーディングを投稿しました 。 彼の議論のいくつかのポイントは、(残念ながら)バッハページの著しく不明瞭な複製に基づいており、右側の不完全なグリフ(切り取られている!)はCの何らかの方法であると解釈されています。しかし、もっと重要なのは、結果のレイアウトはバッハのレパートリーで音楽的に機能しますか? これは、他のフランス/イタリアのオーディネアレイアウトに似ています 。コアは1つであり、5番目はBから上に、CまたはFから下に徐々に外側に伸びています。

FAQページ3で指摘したように、このレイアウトは特に17世紀の音楽で素晴らしい結果をもたらします。 ただし、WTC自体のより冒険的なキーには対応していません(つまり、3つまたは4つのシャープ、または2つまたは3つのフラットの古い制限を超えています)。 WTCのタイトルページから派生したバッハの気質の候補は、WTC内のすべての音楽から始まるもっともらしい音楽結果をもたらすべきではないでしょうか。
 

=============ここまで======================
 
要するに、Jobin氏の提案する音律で、平均律クラビーア曲集を演奏しても、良い効果が得られないと言って否定している訳です。しかしそれはレーマン氏の主観でしかありません。レーマン氏の頭の中にある平均律クラビーア曲集のイメージと違うと言って否定しているにすぎないのです。バッハ自身の本物の演奏を直接聞いて、それと比較して批判している訳ではない、ということに注意しなくてはなりません。

現在の我々の価値基準から判断して、より価値があり実用性の高い音律は、レーマン氏の案である可能性はありますが、それは、歴史的な事実がどうだったか、という問題とは別の話なのです。
 
中全音律を理解するのはとても時間がかかります。まるで外国語を習得するのにも似た大変さです。現代の音楽理論をマスターしているからといって、中全音律も簡単に理解できる・理解した、などと早合点してはなりません。レーマン氏の問題はこの点に集約されると思います。
 

 

 古楽 チェンバロ


日付:2019年09月10日

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