Shigeru Kan-noさんのブログ(日記)〜クラシック音楽の総合コミュニティサイト Muse〜

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ケルンの梯子コンサートIV:4月14日

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いつもケルンの音大の土曜日の夕方はアルバン・ベルクSQクラスの発表会のようだ。放送局の現代音楽のダブル・コンサートの前なのでいつもついでに訪れている。

今回は前に一番上手いと紹介した「アートス・トリオ」だけのプログラム。このチェロのステファン・ハイマイヤーはベルリンフィルにさっさと入ればいいのに、と思うほどだが、空きがないのか、室内楽だけやりたいのか今の状況で満足しているようだ。一曲目のジャン・フランセのピアノ・トリオ(1986)は現代だが調性があり、保守に属するが個性がやたらと強い作曲家。様式としてはラヴェルぐらいの近代音楽に属する。二曲目のシューベルトの「ノッテュルノ」トリオD‐897は単一楽章しかないので未完成の作品に聴こえる。休憩を挟んでブラームスの作品8ロ長調の作品は有名だ。シュトットガルトのこれも大変上手いピアノ・トリオ「OP.8」の名前はここから来た。この「OP.」という名前は他にもあって、フェルバッハのアマチュアEnsemble „Opus 7“ des Philharmonischn Choresは僕のWVE-131の合唱曲を初演している。ブラームスの戻ると出だしや第二楽章のスケルツォがシューベルトの音楽の出だしに聴こえる。でも規模が大きく難解であろう力作。

WDRのアンサンブル・ヨーロッパ・シリーズは今回で第6回目。ゲストはフランスのパリのアンサンブル・「クール・スィクー」。アンサンブル・アレフのようにパリにも「アンター・コンテンポラン」の他にも無数の現代音楽アンサンブルが多額の補助金を受けて存在して激しい競争している。8時のコンサートはトリスタン・ミラーユのピアノ独奏の「La・Mondragore」から始まる。今時、普通のピアノ独奏曲?期待しなかったとおり、存在しなくとも良い曲だ!この人のアメリカのコロンビア大学教授の年俸は億を軽く越しているとか?アメリカ製博士号のようにそれが作品の質の足を引っ張っていることは大いにありえる。

ミカエル・ジャレルという作曲家は自分の楽譜を見てもらった事があるので良く知っている面白い正確の人間。でも全メンバー参加の「Assonance VI」の作品には反映してなくて、フランス・アカデミズムのような教科書的作品。次のジャン=リュック・エルヴェの「Interier Rouge」も同じ。長いピアノ独奏や細かい音符が多くてメシアンのトゥガンラリーラやブーレーズの「リテュエル」などをすぐ思い出す、焼き直しの傾向が強い。おしまいのフィリップ・ウーレルの「Figures Libres」も同じ方向だがもう少し自己の確立に音楽を消化している佳品。これだけ作曲者が出席。もう50を超えているが更に強い独創性を望みたい。

10時からの第二段は故ジェラルド・グリセイの「Vortex・Temporum」一曲だけ。正味38分の音楽はピアニストが大活躍。いつものようにスペルトル的な音楽の配合。第一曲はジェラルド・ツィンスタックに、第二曲はサルバドーレ・シャリーノに、第三曲はヘルムート・ラッヘンマンに捧げられている。全員ノーノみたいにブーレーズが取り上げない作曲家たちだ!こうやって反主流派の作曲家はお互いに裏で腕を磨いて徐々に主流派を追い越し新しい「主流派」となる。でも「パリ・コンセルヴァトワール・アカデミズム」という言葉があるとすれば、今日のすべての作品はまだまだそれに入るであろう。

菅野茂

 作曲家 指揮者 現代音楽 ピアノ 交響曲


日付:2007年04月15日

7件のコメント

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このブログ(日記)へのコメント

とっち〜(Totti+81)

とっち〜です。

超遅れた、4.1付 Shigeru Kan-no さんブログへのコメントの返信ありがとうございました。お忙しいのにエネルギッシュですね。感心します。

本日は、昨年亡くなったリゲティの Etudes / Books I + II(*) のCDを聴いてるとこに『梯子コンサートIV』が入ってたので即読みでした。
現音界(?)の内部事情など知りませんが、歯に衣着せない Kan-no 節に大笑いしました。スピード感ある記述も面白く読めます。
現代音楽の世界は権力闘争も激しいようですね(当然ですね)。天賦の才と圧倒的な個性にあふれる自由人たちが、死屍累々たる歴史を築いてきた延長にある世界ですから、常人には伺い知れないものがあることは容易に想像できます。

ところで伺いたいことがあるのですが、現代音楽の世界は、ブーレーズが頂点に立っているような"権力構造"になっているのですか?
(私の読み方が偏っているのでしょうか?)
確かにブーレーズは、ドメーヌミュジカルの昔から現代音楽の強力な紹介者でもありましたし、NYフィルの音楽監督、IRCAMのボスと(そこまでは同時代に知ってましたが)、作曲以外での影響力も大変なものだとは思います。
一方では、シュトックハウゼンは自分の世界の構築に勤しんでいるように見えますし(別格?)、問題のノーノは早くに亡くなってしまった。戦後の三羽烏ではブーレーズだけが中心に位置するようにも見えます。
でもそれは、作曲と演奏の双方において、フランスが中心にないと成り立たないように思うのです。例えば、アメリカの存在を意識するのです。大陸が違えば影響のあり方も違うということでしょうか?
例えば、いかなケージの存在があろうとも、ヨーロッパの伝統音楽の底力は揺るぎないものである、というような。はたまた、ブーレーズがケージらに寛容であったのは、ヨーロッパがアメリカを取り込んで更に(ヨーロッパ的に)発展していくという、傲慢なまでの自信に裏打ちされたものであったのか(ブーレーズ個人はそうだと思いますが)。
また、ヨーロッパに限定しても、ドイツの存在はフランスと双璧を成してきたように思えますし、イタリアも数多の俊英を排出しています。
独りフランスだけが、現代音楽においても頂点に立つべく、文化的な政治力を駆使してきたのでしょうか? そしてそれが成功しているということなのでしょうか?
その象徴が IRCAM であるならば、ある程度納得はできるのですが、今度は IRCAM の影響力の評価に戸惑うのです。
長年のブランクがあるので、頓珍漢な質問でしたら申し訳ありません。

(*)ピアニストは Idil Biret。全く知らないピアニストですが、聴きやすい、音の立った演奏で気に入ってます。

2007年04月15日 23時54分06秒

Shigeru Kan-no

Boulezは式をしているので目立っているだけです。新作はStockhausenの方が多いのではないのでしょうか?彼は片方の耳が子どものときの栄養失調で聞こえないままなので指揮には適さないのですね。昨日もラジオでNonoを聴きましたが、ちっとも馬鹿にならない大変な作曲家です。アメリカはあれだけ派手な国なのでカミなどの売り出しも派手なのですね。Boulezが目立つのは良く分かります。でも彼は「Marteau」以降はそれを超える作品は無いと見て良いのですが。

ケージのCDの売り上げはこの3羽鳥を超してるのじゃいでしょうか。本当に彼らのセリエリズムをぶっ壊した張本人ですね。偉大です。BoulezはどうしていつもパリではなくBaden=Badenに住んでるかわかりますか?フランスでは交響曲の番号もつけられないくらい曲を書きにくいといってますね。オケも数もドイツの150にたいして30ぐらいでしょう。みんなこっちにくるわけがわかります。音大もパリ音楽院が芸大に相当するだけ、こちらは州単位で2つぐらいで合計30近くあるし。公共放送局も州単位であってそれぞれNHKより二桁ぐらい多く仕事をしてるわけですからそれだけチャンスは多くみんなこっちに来ますね。現代音楽祭などもしかりです。IRCAMでやっているのは電子音楽だけです。あそこの日本留学生も勘違いして訳しているらしくて文化予算の半分がIRCAMに来るはずはないです。バスチーユのオペラほどは予算は行ってないでしょう。バスチーユといえどもWienほどは使ってないし。ミュンヘンみたいに初演もほとんどやってないのでハンブルクぐらいの予算規模かもしれませんね。

Biretはトルコ人で僕もブーレーズのソナタのCDありますね。最近はトルコ人の活躍が凄いです。EUに本気でなろうとしているのでしょうか?

ブーレーズは最近ちっともフランスのオケは振ってないと思います。アンターコンテンポランでConcervatoireの隣のCite De La Musicで定期してそれからドイツの各都市に客演で持ってくるパターンが多いです。フランスのプロモーションにそこに入っているCDMCがありますが、活動は日本と比べ物になりませんが、ドイツはこういう期間はすべて地方に分散しているので比べられないので消極的に見えるのです。この国には文科省とか機関もすべて地方にあり国は日本やフランスのようにちょっかいを出しません。

2007年04月16日 00時38分18秒

Shigeru Kan-no

「指揮」の間違い、Sorry!

2007年04月16日 00時39分05秒

とっち〜(Totti+81)

非常によく分かる話でした。
特にドイツのポジションには納得です。ドイツの方が、底力があるようですね。地方分権ぶりは19世紀のまんまですね(笑)。でもそれが底力の源泉になっているとは。
ブーレーズは確かに70年代以降、極端に寡作になってますね。作曲家としての影響力には疑問符です。枯れたのかなぁ。そうは思いたくないのですが。指揮は指揮者に任せても良かったのではないか?
『打ち手の無い槌』は緊張感溢れる名曲で、ティーンの頃LPを買って、魂を揺さぶられるような感動に浸ったことを覚えています。
ルネ・シャールの詩も良かったと思います。フランス文化の一つの勝利だったのかもしれません。なにしろ、文化的には(新)左翼より先を行くと、保守的政党が有言実行する国でしたから。当時のソ連と比べなければ理解されないでしょうが。
この路線なら、ノーノとの確執ももっと穏やかだったような気もします。ノーノはコミュニストだし、政治的な立場がブーレーズと異なるのは分かるのですが、音楽的には類似性があったと思っているのですけどね。
ノーノが早くに亡くなったのは残念です。ポリーニを想定した古典的十二音の協奏曲とか、反動的に書いてほしかった。
大体、イタリアの共産党員のアーティストって、日本や旧ソ連じゃ即除名みたいなのが多いですからね。映画監督とかも。ま、い〜かげんな国なんでしょうね。
学生の頃、三羽烏の中で、ノーノを聴く機会が少なかったこともあって、見つけたLPを即買いしたことがあったのです。それが『力と光の波のように』でした。ゾッとする程感動しました。あの心臓の鼓動と男の子の不気味な声が頭にこびりついてます。
ですから、ノーノが大作曲家の域に達しているというのは納得できます。日本で発売されるディスクは昔から少ないですね。イタリアの演奏家が出せば良いのにと思いますよ。かなり不満です。先人を敬ってほしいものだ。
シュトックハウゼンは毀誉褒貶の激しい作曲家ですが、とにかく自分の道を突き進み、多作家(長大作家?)であることは驚嘆すべきことです。
質の判断はともかく、若い熱狂的なファンが大勢いることを最近知って、面白い作曲家だなぁと思ってます。
シンセを使ってる連中が、電子音楽の始祖としてシュトックハウゼンを敬っているのは、"歴史認識"としてもとても良いことだと思います。

Biret の情報ありがとうございます。トルコ人ですか。変なスペルだとは思ったのですが。彼(彼女?)のピアノは良いですよ。リゲティを見直しましたもん。ピアニストの力量です。
いま時の上手い感じではないのですが、曲を形作る力があると思いました。こもった音もあるのだけど、全体的な印象はクリアです。きれいにクールに弾いてますよ。
トルコは日本と縁が深いのはもっと日本人が意識すべきですね。そして、イスラム国でもある。
なんのかんの言いながら、EUに入ってしまうのが良いと思いますね。その時、他のイスラム圏とのパイプがきちんと保たれていれば良いのですが。特異な国ではあるけれど、日本の友好国だし、ドイツとも上手くやっていってほしいですね。

いろいろ話したいことはありますが、日本は午前3時です。また週末にでも詳しくお話ししましょう。

2007年04月16日 03時12分57秒

Shigeru Kan-no

Boulezは「Work in progress」が仇となって作品数が少ないもんだから、更に指揮者で著名なもんだから作曲の影響力はちょっとだけ弱いですね。でも重要ですよ。彼は現代音楽については話好きだし、よくラジオのインタビューに出てきます。僕は最後にあったのが一昨年のバイロイト祝祭劇場の後ろだったですね。Marteauは昔Wienで彼とアンターコンテンポランでGPから本番まで見せてもらった事があります。Stuttgartの放送響に来た時もNotationsなど全部見せてもらいましたね。良い人です。

NonoはやはりWienで一回だけ彼の講義に出たことがあります。凄いぶっきらぼうでとてつもなく音楽に集中しているので正真正銘の大家でしたね。でも酒は飲みすぎるし女好きの癖があるとか?

Stockhausenはのめり込むとWagnerのように中毒になりやすいです。中期までの作品は良かったけれど最近の作品は評価が完全に分かれます。最近ケルン大学の講義に来てないですねえ。

Biretは凄くピアノが上手いですよ。でもドイツで現代音楽のメジャーになれないのはここ独特の隠れた人種差別主義のせいでしょう。

書きたいときに何でもかんでもいつでもどうぞ。こちらも時間があるときにだけ書きます。期限もありません。

2007年04月16日 04時00分48秒

とっち〜(Totti+81)

寝ようと思ったのに起きてた私が悪かった。
あんまり面白い話を立て続けに送らないで下さい。寝られないから。
=^ェ^=;
ブーレーズが「良い人」ってのは分かりました。ノーテーション、全部見せてもらったんですか。
若い時から、ここまで現音の紹介なんて簡単にはできませんしね。紹介が偏ってるとしても、それは好悪はあるにしても、主義主張がベースですしね。
"Work in progress が仇となった"というのが面白いですね。
文学の領域では、ジェイムズ・ジョイスがフィネガンズ・ウェイクを "Work in progress" として逐次発表してます。ジョイスも寡作だけど、作品生成のプロセスに関係あるのかもしれません。仕上げには見切りをつけた方が作品数は増えますしね。
そういえば、未完で発表して改訂を続けるようなやり方は、ルチアーノ・ベリオなんかでもやってませんでしたっけ?
ベリオも良い作家ですよね。奥さんも素敵に超絶的な声だったし。

私は、三羽烏は尊敬してますよ。ノーノとブーレーズの確執も込みで。文化を大きく前進させた人間ってのは尊敬に値します。
ブーレーズが「現代音楽については話好きだし」ってのも分かります。大体、フランス人は論理好きだし。IRCAMも良いと思ってるんですよ、世界的に見て。現音ポシャったら音楽の未来はありませんもん。
確か IRCAM 設立の同時期、にクセナキスのポリトープもありましたよね。私はクセナキスの方が好きなんですよ。
理論的にはおかしいとこもあるのだろうけど(物理出身の日本人作曲家が『音楽芸術』で語ってました)、伝統音楽とは絶縁した地点で出現した点だけでも、我々好事家には拍手喝采ですね。実際、良い曲、面白い曲が多いと思います。それが全て。

ノーノが飲んべえで女好きというのは(事実なら)面白いですね。作品とは全然無関係ですけど。早死にしたのが酒のせいなら残念ですが。
とにかく、ノーノは日本でもっと紹介されてほしいものです。CDがどさっと出たら買いますよ。

シュトックハウゼンの評価は70年代半ばから極端に別れてましたもんね。ヘリコプター四重奏曲なんかは、アイデア段階で頭が痛くなりますが。ま、天才の勝手です。
ワグナーとの類縁性の指摘は面白いですね。若い世代の受け入れ方はそうなんじゃないでしょうか。大家であることは間違いありません。
70年大坂万博のドイツ館で、シュトックハウゼンの説明を、入れ替えを無視して2界聞いたことを思い出します。+と-記号だけの楽譜も買いました。(=^◇^=)kerakera
彼をステージやPAで見たことは何度かあります。

Biret ってそんなに上手いのですか。確かにリゲティの超絶ポリリズムをペロッと弾いてる感はありましたが。人種差別は中々無くなりませんね。せめて、現音では完全実力主義になってほしいものです。

ではまた。

2007年04月16日 05時09分42秒

Shigeru Kan-no

まあ追い立てませんのでゆっくり書いてください。こちらは今書かないとずーっと忘れたままになるので書いているだけです。あおりじゃないですよ。

"Work in progress”は決定稿が出てこないもんだから曲自身の価値も決められないし、楽譜も買っても次から次に改訂版が出るので空しいですね。どっかで決めないとダメでしょう。

僕もクセナキスは模範として好きですね。普通の人はメシアンやシュトックハウゼン見たいにはかけますがクセナキスだけは無理です。音楽の理論は何でもいいんですよ。でっちあげがそのまま一流の音楽になるわけです。日本人は保守的だからそう書く人がいるのでしょう。

ノーノが死んだのはイサン・ユンやハインツ・ホリガーが言うように酒の飲みすぎのようです。

ヘリコプター四重奏曲は悪くない作品ですね。でも余りにも金がかかりすぎるのでボンのオペラハウスが中止しましたね。

+−=Plus-minusのことかな?これをフライブルクの人が普通の譜面に書き写してオケで音を出したの聞いたことありますね。

Biretって良いピアニストだと思いますよ。でもメジャーの現代音楽に呼ばれないので一回も見たことはないです。ドイツ人はどこでもトルコ人を馬鹿にしているからそのせいでしょう。

ま、ゆっくりやりましょう!

2007年04月16日 05時45分02秒

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