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『タンホイザー』5月10日,ケルンオペラ

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このプレミエは前評判が良くない。どうも指揮者のテンポが問題とか?こういう不評になるとかえって興味を引くのが人情で行ってみたくなる。

版はドレスデン版でバレエを含まない為、オペラ予算の節約になる。完全に3時間15分以内に収まるのでオーケストラも安く使える。様式的にも音楽的統一があるが、ワーグナーの初稿は「リエンチ」や「オランダ人」などいつも地味なオーケストレーションになっている。『タンホイザー』の版の違いも「ドレスデン」と「パリ」の単純な区別はもう止めて、新全集版に従って、[ドレスデン−パリ−ウィーン]と分けたい。ほとんどの上演で一番多いのがバレエの入った「ウィーン版」である。一番少ないのがパリ版だが中には古いCDのドキュメントに入っていることがあるので、この区別を無くす事は出来ない。国際ブルックナー協会や国際シューベルト協会のように全集版を既に出してしまってもうやることが無いので暇つぶしに作品を混乱させるような出版とは全く違う。

演出はルート・ベルクハウス以降は女性で画期的天才演出家はもう出てこないが、ここでも例外ではなかった。ジャスミン・ソルファガ−リは既成の演出手法を集めて真似た物で何一つ新鮮なものはなかった。タンホイザー役のトルステン・ケールは凄くはないが無難、トップではないがバイロイトでは日常的に歌っているヘルデン・テノールと同水準。ヴァッサールとザイフェルトを掛け合わせたような声は通るが鼻腔共鳴がかかりすぎて歌詞が余りわからないような声質。ヴェーヌス役のイリス・ヴァ−ミリオンは色気役というよりもつっぱったカルメン役に適してきて、ちょっとしたドゥラマトゥロギーのミスか?エリザベート役のカミラ・ニルンドは若くも将来を期待させる実力がある。しかしワーグナーにふさわしくない小柄な体が特徴。

しかしながら最大のこの演奏の責任は指揮者にある。自分もこの指揮者クラシック音楽にとても弱い事をブルックナーの第八交響曲や、マーラーの第六交響曲などを通してうすうす感じていたが、このタンホイザーの指揮を通して完全に暴露されてしまった。最大の原因はテンポにある。要するに早すぎるのであるが、聴き手が与えられた音楽を消化して完全に納得して精神の栄養とする前に、次の音楽がやってくるのでいつも完全に消化不良を起こしてしまう。どうもこの曲の本質を完全には理解しているとはいえない。即ち指揮者は今では完全に専門化していて現代音楽とクラシック・古楽に分類される。彼は言うまでも前者に分類される、クリスト・フォン・ドホナーニのようなタイプの指揮者である。しかしながら現代音楽の経験のキャリアがオペラ指揮者の重要なキャリアになることは言うまでもないが。

この曲を何十年もかけて研究されてから振られた場合はこういうものではない。それだけスコアが膨大なのである。現代音楽は大方が初演で譜面を正確に再現してそれで精一杯であるが、クラシックの場合は古今の名演が多量に続出しているので単に譜面を読むだけではなく、全ての名演の検証も当然要求される。この指揮者に多分極端に忙しいせいか、その余裕があったとは到底思えない。普段では考えられない盲人の徘徊のような音楽としか印象に移らなかった。もちろん当然の指揮者の仕事であるレチタティーヴォの処理などは正確にこなしていたが、それはごく当然としてもこの作品の本質がどこにあるのか全く最後まで見えてこなかった。


菅野茂

 作曲家 指揮者 現代音楽 ピアノ 交響曲


日付:2008年05月12日

2件のコメント

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このブログ(日記)へのコメント

初めて書き込みさせていただきます。
面白く拝読させていただきました。色々な角度から捉えていらっしゃる、詳しい方の文章を拝読させていただくのは、この上ない楽しみです。

「タンホイザー」の版の問題から提起なさられていて、本当に感激いたしました。普通にオペラをご覧になる方では、まず一般的な観劇感想では絶対に話題にもされない事でしょうから・・・

劇場でのレパートリー公演では予算の問題もあるでしょうから、簡素なドレスデン版をという・・・実に論理的なご説明に納得がいきます。

特別な公演や何か特段の事情がない限りパリ版など(そういえば、かつてのサヴァリッシュのバイロイト盤:ドレスデン版とパリ版をつなぎ合わせた折衷版でしたが)、実演で聴ける機会はないのでしょうね。

またルート・ベルクハウス女史のお話を引用なさっておられるのも面白く、他にもいろいろお伺いしたい所です。私は友人からコピーしてもらった映像で、彼女の演出(ベルク作品)を見ただけなので、偉そうな事は申し上げられませんが、本質を鋭く抉る見事な演出でした。
 一時期、女性映画監督でもあるリリアーナ・カヴァーニやリナ・ウェルトミュラー(カヴァーニほどは成功していない)など、注目されていた人はいたようですが、仰るとおり、ベルクハウスほどの足跡は残しておりませんですね。

ところで・・・
前日記から、拝読させていただいて類推するには、この公演の指揮者は・・・セミョン・ビシュコフだったのでしょうか?

前の日記でビシュコフとメータの類似性を述べておられましたが、「あ、そうだ、なるほど」と思わされて苦笑してしまいました。
終始、話がそれまくりで恐縮ですが、メータのタンホイザーも個人的には感心しませんでしたが。

初書き込みにも拘らず、生意気に長々と失礼致しました。

2008年05月23日 04時29分33秒

Shigeru Kan-no

うちはどんなに長くともかまいません。詳しいほうが面白いです。

特別な公演や何か特段の事情がない限りパリ版など(そういえば、かつてのサヴァリッシュのバイロイト盤:ドレスデン版とパリ版をつなぎ合わせた折衷版でしたが)、実演で聴ける機会はないのでしょうね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
メータのミュンヘンやバレンボイムのベルリンのタンホイザーが折衷版といわれていますね。

またルート・ベルクハウス女史のお話を引用なさっておられるのも面白く、他にもいろいろお伺いしたい所です。私は友人からコピーしてもらった映像で、彼女の演出(ベルク作品)を見ただけなので、偉そうな事は申し上げられませんが、本質を鋭く抉る見事な演出でした。
・・・・・・・・・・・・
この東ドイツのおばちゃんは凄い天才おばちゃんでしたね。Wienではオルフェウス、Stuttgartではマクベスや椿姫を見ました。彼女だけですね、演出で全く不満が無いのは。もうこういう演出家は二度と出てこないです。

ところで・・・前日記から、拝読させていただいて類推するには、この公演の指揮者は・・・セミョン・ビシュコフだったのでしょうか?
・・・・・・・・・・・・・
ごめんなさい書くの忘れましたが、GMDのマルクス・ステンツでした。こいつもStuttgart客演時代ベルクハウスの演出した「マハゴニー市の滅亡」でメルケルよりも完璧な指揮を見せまして期待したのですがどうもクラシックがとても弱いようです。ビチコフは放送オケでまもなく「ローエングリーン」の2回の演奏会形式です。このプロべの感想もこのブログの前に書いておきました。仕事で本番は行けません。

終始、話がそれまくりで恐縮ですが、メータのタンホイザーも個人的には感心しませんでしたが。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
こっちではこのミュンヘンのヴィデオを二回TVで流しましたが、感心したのは演出のみでした。メーター指揮のオケはサワリッシュ時代のようなミスがなくなったのは確かです。でもそれだけです。話はいくらそれてもかまいません。適当にやりましょう。

2008年05月23日 06時00分56秒

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