Shigeru Kan-noさん
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今年の今シーズンはもう8月14日に始まってしまったので、練習もこの日が第一回目の公開となった。ギュルツリッヒ・オケのよるマーラーの六番によるハーサルの模様は去年書いた。このオケが5番の初演経験もあることも書いた。だからマーラーはこのオケの十八番のレパートリーに入っているとも言える。
しかしながら今回は練習の始めにコメントがあり、今日が第一回の練習であり、団員は丁度夏休みから帰ってきてまだ気分が抜けない事との断りがあった。今日は第3楽章だけを公開したが、道理で最初の通しはミスや音程が合わないところが多い。早いパッセージは演奏を飛ばしていた。しかしながら第二回目になると完全に板についてくる。三回目の繰り返しはもう既に完璧に近くなる。いつも第一ヴァイオリンのすぐ隣50cmのところに席を構えるのでその事が手に取るようにわかる。
この曲は少し前にジェームス・コンロンとのEMIのCDがあるが、現在のケルン・オペラの指揮者のステンツはやはりクラシック音楽の専門とはいえない。最近五番は一番や三番よりも頻繁に演奏されるぐらいの人気曲目になったが、それだけこれをどう解釈するか難しくなったといえる。自分の体験では生はシュトットガルトで2回聴いただけだと思い起こされる。まず現地の放送響でジェルメッティ指揮は80分かけた名演だった。次の客演のレイフ・セーゲルスタムとラインラント・プファルツ州立フィルハーモニー交響楽団の5番はその放送オケ並みの精度に感心した物だった。この曲は当時残念ながらウィーンではバーンスタイン指揮では聴けなかった。当時ザルツブルクだけのプロダクションデ本来の目的はCD録音だったからである。しかしもう教科書と言って良いその古典的模範は特に新しい発見をもたらす物ではなかった。後は思い出せない。聴いたかも知れないが、たいした印象に残らないとすぐ忘れる癖がある。
今回のテンポからすると全体は65分ぐらいであろう。この曲を余り速く振ってしまうと、余り名演になりにくいのは統計上わかる。レパートリーは違うがセルジュ・チェリビダッケやジェームス・レヴァインは特に曲の経過部を極度に拡大して見せてその都度その音楽を新しく発見させたものだった。今はこう言った指揮者がまずいない。商売的に流れ作業でやりさえすれば良いと思っているらしく、ノルマだけを達成する為にすーっとごまかして通り過ぎていく。そう言う態度はすぐ聴衆に伝わってくるので凄く恐ろしい時代になってきたものだ。でもこういうものは生後数ヶ月のベビーにも聞かせるに限る。家も昔はそうだったが、子供の泣き声の為に奏者がニコニコしてしかし我慢して弾いている姿はそのままケルンの音楽文化の未来の聴衆にも明るい事を意味する。
菅野茂
作曲家 指揮者 現代音楽 ピアノ 交響曲