Shigeru Kan-noさん
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Meister Music, MM-2099
http://www.meister-music.com/new.html
オルガニスト:紙屋信義のCDリリースの第二弾。今回は得に「大フーガ」と名乗って、メインに持ち上げている。例のように順を追って曲を解説してゆきたい。
1曲目のフランツ・シュミットのオルガン曲の「前奏曲ニ長調」は一般には良く知られていない作品である。しかしウィーンの住民でこの作曲家を知らないものはいない。アントン・ブルックナーの弟子でウイーンの音大の学長をやった人であるから交響曲やオルガンの作品があって不思議ではない。われわれは彼のオペラ「ノートルダム」の間奏曲やどれでも50分を越す4曲の交響曲でかなり親しんでいる。特に後者の最後の4番はウィーンの指揮課では必修パートリーである。ここの卒業生がドイツのオケに客演して毎回機械的に披露する。
次の2曲目がそのメインの「大フーガ」と書かれると我々一般のオルガンの部外者は即ベートーヴェンの変ロ長調の大フーガを思い浮かべてしまう。規模が大きいという意味だがベートーヴェンの18分かかるフーガに対してここの演奏は11分54秒しかかかっていない。この原因を下記に列記する。
言うまでも無くこの作品はバッハの最高傑作の一つだけではなくて、古今のオルガン独奏曲の最高峰の音楽である。したがってベートーヴェンの5番のように非常にポピュラーなので誰でも良く知っているし、みんなこの曲の解釈について理想の形を絶えず描いているはずである。自分もとてもオルガンは弾けないので昔西村朗とこの曲を冗談でピアノ連弾でこなしたことがある位良く知られた音楽である。高校生の大昔のクリスマスにTV見たマリー・クレール・アランは大変感動したが余りにフランス風にデリケートで理想の音楽とはいえなかった。それからヴァルヒャやリヒターのレコードも聴いたけど理想とかけ離れた不満は消え去ることが無かった。こういう意味でここでも手加減無しで厳しく演奏法を解剖してゆこうと思う。
まぞ序奏のテンポが非常に速い。後半のアレグロと対比させるために自分だったらグラーヴェでやりたい。次がレギスターの組み合わせである。日本風に甘ったるい音色である。バッハはこの曲をハンブルクのカントアの就職の際の演奏していて審査員をたいへを大変感動させたが、財産が無くて教会への寄付ができなくて落とされた苦い経緯がある。この曲が北ドイツでおそらく初演されたであろうかつ北欧の暗くて寒い厳しい風土と考慮して個人的には、ストップを重く辛いものにする。当然テンポは最低限アダージョにまで落とす。レギスターは続くアレグロでも同じである。組み合わせは変えるが、音量と厚みはそのまま保持しておく。アレグロは真性アレグロであるがしかし最低限の重みは保持しておく。人生の苦汁を舐めた作品である。
次のフローべルガーの音楽はウンベカンテであるが、だからこそ礼拝の前の前奏に最適の曲である。
次にブクステフーデの曲が続く。演奏が容易で親しみ易いのが彼の音楽の特徴。
礼拝にも良く使われる音楽。
次にバッハの小品が4曲。コラール前奏曲っぽいが、賛美歌のメロディーを知ってると「ああーこの曲」かと親しみを感じる、オルガニストが好んで取り上げる曲集。
次が問題となるヒンデミットの第二ソナタである。もちろん自分も知らない曲だが、彼は同僚のミヨーと同じくすべての楽器の協奏曲や独奏曲を手がけているのでオルガン曲に手を出していても不思議ではない。従って我々もほかのヒンデミットも曲は良く聴いているので彼の常套手段となる語法は良く知っているが、ここではそれぞれの音に疑いを持っているのが良くわかる。彼の音楽は逆に出てくる和音交換や音のぶつかり合いをそのまま受け入れないと楽しめないのが普通である。「画家マチス」がそうだし「メタモルフォーゼン」、「フィルハーモニー協奏曲」、数々の室内音楽もそうだ。こういう音楽に自然の美を求めては良くなく、寧ろ近代建築を思い起こさせる音楽のデフォルメが特徴的である。
次のブラームスはオルガン曲では傑作を残していないらしい。バッハの真似事的に聴こえる可能性がある。
最後のレーガーの「序奏とパッサカリアニ長調」はシュトットガルト・オルガン学派のお手の物らしい。その壮大な建築はこのCD全体を圧倒する!今までシュトットガルトのオルガン科がこんなにレーガーに力を入れているのかは今でもわからない謎であったが、今回でその一部がわかった様な気がする演奏だった。
作曲家 指揮者 ピアノ 現代音楽 交響曲