Shigeru Kan-noさん
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142. ケルン日本文化センター、6月29日
いわゆるマリンバ音楽の独奏会というと聴く前から絶望視するのが常である。表現力が非常に豊かでレパートリーが無限大に豊富なピアノなどにはかなわないからである。それでもそれをやるというのは相当な覚悟が要る。特に日本は安部恵子を発祥とする命をかけたマリンバ道場のメッカであるのでこの冒険を受け入れる演奏家の層も厚い。
いわゆるマリンバには事実上の音の長さがなく、トレモロで補充することができるが今度は和音の厚みや対位法的な構成が犠牲になる。強弱による音色の変化にも乏しいし結局は始めから最後までリズムで通すしかない運命的な楽器の一つである。
従ってこの演奏会はスティーヴ・ライヒのプログラムを中心に組まれた。言うまでも無くミニマル音楽の創始者の一人であるが、このすぐわかる使い尽くされた曲をどう組み合わせるかが何時も問題となる。
カトウ・クニコの場合は最初ゆったりした非ミニマル的は日本風の曲を何時も据えた。最初の曲は彼女自身の編曲のバッハのマタイ受難曲からのコラール。低い根音を打音にしてのこりの四声体をトレモロにしただけの曲であるが、ドイツで生まれ育った人にはこの曲は受難節の度に教会などで聴く非常に親しい曲である。次にライヒの「エレクトリック・カウンターポイント」のアレンジ版。スチールドラムを使ったのが楽器の飽きが来るのを遠くした。次のが「6つのマリンバ」は多重録音でこの方法は非常にライブエレクトロニックに似ている。これで第一部は終わり。
汗を拭いて水を飲んで次はコミタスの「子守唄」これまた編曲作品。次に休みを置くことなく続けてライヒの「ヴァーモント・カウンターポイント」はヴィブラホーンに演奏させる編曲作品で第二部を終わる。
水入り後の第三部はH・ディヴィスの「パーグランド」はオリジナル作品らしい。で最後のライヒの「ニューヨーク・カウンターポイント」は演奏者によりマリンバ版でオリジナルでないのがまた辛い。しかしその前にミニマルだらけで飽きてしまったが。
アンコールはマイク無しの音響が悪くて良く聴こえなかったが、安部恵子当たりのマリンバ独創作品。武満徹か三善晃風の和音構造でオリジナルで良い曲がないのが何時も残念。
こういう音楽の客の入りは今年初演75年を迎えた「カルミナ・ブラーナ」のようにほぼ満員だった。
作曲家 指揮者 ピアノ 現代音楽 交響曲