R.シュトラウス：アルプス交響曲　名盤：曲の分割による解析表情とテンポの変化解析、指揮者の解釈 3：ゆうじ（yuuji51）さんのブログ：Muse クラシック音楽のコミュニティ

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R.シュトラウス：アルプス交響曲　名盤：曲の分割による解析表情とテンポの変化解析、指揮者の解釈 3

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4. 6人の指揮者の解釈と表現の特徴
4.2　朝比奈
①ベルリン放送響（現ベルリン・ドイツ響）、録音：1964年3月4-5日、解析表情数：28
②大阪フィル、録音：1997年4月26日、解析表情数：43

朝比奈の「アルプス交響曲」の録音は、64年(ベルリン放送響,①)、90年（北ドイツ放送響）、97年（大阪フィル,②）の3演が残されている。ここでは、上記２演を聴いた。

朝比奈の特徴（図2-1～4）
テンポの変化がムラヴィンスキーと類似点が多いため、両者を比較して記載。
朝比奈の’64年録音（①）と’97年録音（②）を比較すると、共通内容が多くかつ解釈的には’97年の方が明らかに完成度が高いため、’64年録音の詳細な内容の記載は省略した。
’97年,大阪フィル：
序奏-第１部：
序奏では、威容を誇るアルプスが眼前に出現する状況を緻密に表現。登り道は、登山者の強い意志を主体に、登山の開始を宣言。鬱蒼とした繁みの状況下で苦労する情感を強調、この情感に苦難に満ちた人生の回想を重ねる。小川は情感を継続しつつ歩む。滝は雄大で力強い。草原では心が晴れて弾むような表現。牧場ではテンポを落として穏やかな心境を一層強調。林に入ると道に迷い心理的高揚感を強調。氷河は、その情景をテンポを落として大きく表現。氷河での危険な心理的緊張状態を強調。
第２部：
頂上では、感謝の情感をしみじみと表現。次にテンポを落として、絶景と感謝の情感の大きさを重ねるように強調表現。続いて絶景に高揚しつつ感動が加わる。景観の幻想的側面を加え、絶景と感謝の表現を力強く再現して次へ。霧がたちのぼるではテンポをかなり落として不安な情感を強調表現。この情感に哀歌をうたい、過去の暗い思い出を重ね合わせて強調表現。テンポを上げながら、激しい嵐がはじまる
第３-終結部：
強烈な嵐の音形は速いテンポで強調、下山は、テンポをやや落として、嵐の大きさと下山の多難さを強調。日没は、穏やかで表情豊か。終末は、主題を回想しつつ名残り惜しむように表現。最後は緻密な情景表現からじっくりと味わうような愛情あふれる表現により終曲。
アルプスは大自然をたっぷりと緻密に表現。解釈の主体は登山者の状況・情感表現を重視している。
ムラヴィンスキーもテンポを大きく変化させて、その変化は朝比奈との類似点が多く、登山者の情感を主体とした解釈。アルプスは鋭い響きにより、その大自然の多彩で威容を誇るが、登山者の人生を波乱に導く異様さや危うさを秘めていることが示唆される。ムラヴィンスキーの他の曲の解釈を考え合わせると、アルプスの解釈は特別な思いがあるようにも考えられる。推測ではあるが、アルプスを政府の実情と重ねているようにも感じられる。
一方、朝比奈の解釈はアルプスは威容を誇る大自然そのもの。登山者は、その偉大さ・多様性と対峙したことで貴重な経験をし、自然に対する深い愛情を感じ得たような解釈が一貫して表現されているような印象を受けた。
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