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文字を持たない文化

イリノイ大学のザウデマ(R.Tom Zuidema)のインカ社会についての研究に、
次のような事例があるらしい。

インカの首都クスコからはあらゆる方向に仮想直線が伸びていて、
その位置は一連の神殿によって示されていた。
そして1年中毎日、クスコの住民のうちそれぞれ違う一族が
それぞれ違う神殿を礼拝した。
クスコの『谷の広場』には1年の儀式カレンダーが精密に記され、
農耕順序や社会的義務や軍事活動などに関する情報は、
その都度、クスコの人々に象徴的に伝えられた。

また、インカの人々は、クスコを『ピューマ』と呼び、
そこの住民たちを『ピューマの体内の構成員』と呼んでいた。
谷間の地形によって多少歪んでいるものの、
都市計画としては、クスコはピューマに似たプランで築かれている。
ワリ『帝国』の研究で知られるW.イスベルは、
ナスカの地上絵の機能についてこの事例が参考になると考えている。

更に、ナスカの社会にはワリやクスコのような
中央集権的な食料管理制度と食料貯蔵施設がなく、
局所的、家族的なレベルで豊作時の食料を保管していたので、
豊作時に人口が増え、不作時に死亡者がでやすい状況にあった。
その為、豊作だった場合の個人貯蔵分について、
大規模な労働力を投入する必要のある儀式活動に注意を向けさせ、
祭祀『施設』の『建設』=地上絵を『描く』活動に
従事する労務集団に食糧を供給する為に
強制的に取り立てるシステムができていて不作時に備えていた、
とイスベルは考えている。

一方、暦に関する資料については、
暦を特に天文学的観測と詳しく照合する必要のあるときには、
キープによる方法は非実際的で記録することは難しいと考えられる。
故に利用可能で最も永続する素材としても地表が選ばれた、
と考えている。
これは彼がインカや先行するワリの研究から、
日本の律令時代の雑徭のような労働力を税として
『公共事業』に提供する制度であるミタ制度の先駆と想定していると推測される。

研究者たちは『文字を持たない社会がどのように組織を動かすか』
という重要な情報を貯えようとする試みが、
地上絵に反映されていると考えている。

私自身、言語学研究をする上で、
相当の古代文明研鑽に力を注いできたが、
彼らの暦システムや天文学の知識には
本当に驚かされるものがあります。
これぞこの世の七不思議!!!

私の研鑽生活は今日も続きます。
今日も一つお利口さんになりましたとさ。
めでたし、めでたし!!!

裕美・ルミィヤンツェヴァ


作成日:11/19 13:55 最終更新日:11/19 13:55

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