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ちょいと悪いラッパおやじたちとRICOちゃん

先日、『新宿 春の楽しいジャズ祭り』で、
6人のトランペット奏者の演奏を同時に耳にしました。
ピアニストは女性ジャズ演奏家を代表するRICOちゃんこと小川理子、
近年ぐ〜っと実力を付け、以前に増した貫禄と揺らぎないハーモニーで、
落ち着きある即興とブルージーなアクセントで、
鍵盤上の華麗なるダンスを展開してくれる頼もしい乙女です。

さて、本題のトランペット・プレイですが、
これだけ集まれば演奏も勿論千差万別、
日本のジャズの歴史と共に歩んできたベテランから、
地道に独自のスタイルを形成してきた情熱派までここに勢揃い。
それに加え、若手実力派の登場と来ては
正統派と個性派のバトル、対立さえ実に面白くなってくる。

トランペットという楽器はそもそも指よりも唇で操る楽器、
それ故に音色としては人間の声にものすごく近いもの、
大概のプレイヤーが歌やトークを得意とするので、
バンマスがトランペッターというバンドが実際には殆どである。

この楽器の見せ所ははじけるようなサウンドから、
裂けるような千切れ音までを操るテクニックに先ずあると思う。
どこまでもナチュラルな感覚で音を支配することができれば
楽器を通して歌うことも、泣くことも、叫ぶことも、悲しむことも可能、
喜怒哀楽を自由自在に表現できるようになるのです。

そして、疲れ知らずといわんばかりに高音域を見事に制覇し、
息切れを感じさせないような長音を保持するところが見せ場、
ちょっとしたアクセントや愛嬌で笑いを取るのが舞台でのパフォーマンス。

しかしながら、最も易しいようで難しい演奏とは自然体であること、
和音から抜け出さないだけの正確な聴力を有し、
尚且つ、聴き手が感動を覚えるようなフレージングで攻めていく。
何かをやらかしてやろうというプレイよりも、
実は何もせずして人の心を掴む演奏の方が遥かに難しいのである。

これはこの楽器に限らず、歌にしてみても、他の楽器にしてみても当てはまると思う。
ごく普通に淡々と奏でる過程が生み出すことのできる感動・感激、
ここに込められるものは人の経験であり、ハートであり、魂である。
そういうことを考えながら、熱心に耳を傾けたのが
正にこの『ちょいと悪いラッパおやじたちとRICOちゃん』でした。

歌うのではなく、自分の声を自ら聴いて受け止める。
与えるのではなく、歌声を自分自身に木霊させる。
そういった主観的プレイではなく、客観的プレイを重視し、
上辺だけでなく作品をより深いところで理解し、
それなりの精神修養を伴う演奏に力を注いでいくことが何よりも大事。
これらの大切さをしみじみと噛み締めている今日この頃です。

めでたし、めでたし!!!

裕美・ルミィヤンツェヴァ
作成日:04/08 03:08

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